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氷室冴子さんの女子校小説

2015.06.06.Sat.23:50
大好きな氷室冴子さんの女子校を舞台にした作品群。
『クララ白書』、『アグネス白書』、『白い少女たち』、『誘惑は赤いバラ』。
モデルとなった学校や場所を推測して照らし合わせたりしつつ、懐かしく振り返ってみた。
作品ごとの学園や寄宿の行事や決まり、登場人物や好きなシーンについてなど。
書き出してたら楽しくて、おそろしく長くなってしまいました。

まず主人公たちが中等科三年の『クララ白書』、『クララ白書 ぱーとⅡ』(1980年初版)より。

・徳心学園は札幌にある私立の中高女子一貫校。
・高等科の三学年を四年生、五年生、六年生と呼ぶ。
・徳心中等科の主な行事は、新学期の新入生のクラブ勧誘合戦、春の体育大会、立志式、英語暗唱大会、詩の朗読大会、全校読書感想文コンクール、秋の体育大会、文化祭、クリスマスバザー。
・6月に前期クラブ備品検査がある。
・中等科図書文芸部が発行する「柊」という文芸誌がある。夏休み前に一ヶ月遅れで出した号に掲載された部外者投稿の短歌『誰がための手巾の縁取り楽し気に せめて与えよその刺したる赤き指我に』が話題となる。
・文化祭は10月24日から26日までの三日間。クリスマスバザーと並ぶ二大行事。
・中等科文化祭実行委員会は中等科各学年委員長18名、文化委員長18名、生徒会役員6名の計42名で、夏休み前から何度も開かれる。中等科一~三年の中等科演劇、高等科四、五年(例外的に六年も)の高等科演劇が文化祭の花。全催し物が対象の全校生徒投票による文化祭最優秀賞は例年中劇か高劇が受賞。結果がその年における中等科優位、高等科優位を決定づける。
・文化祭直前は準備のために下校時刻が19時半までとなる。
・12月に入ると校内はクリスマス一色。階段の踊り場ごとにマリア像が立ち、花が活けられ、講堂の入り口にはキリスト誕生の場面が人形や馬小屋の模型で再現される。
・クリスマスバザー前日の12月22日には生徒会室で最後の打ち合わせがある。
・クリスマスバザーは12月23日の午前9時半開場。生徒の手作りの小物や父兄からの寄付の品物、模擬店では食べ物を販売。
・中等科出品物の目玉は、シスター・アンズヴェリスお手製のクッキー、シスター・テレーゼお手製のポプリ、シスター・アンジェリスお手製の洋梨とトマトと人参のジャム。
・模擬店ではドーナツ、クリスマスプディング、ロック爆弾(ポップコーンを水飴で丸く固め、粉砂糖やナッツカラメルをまぶした、かりんとうのような西洋駄菓子)、コーヒー、チキンスープ、ミートパイなどを販売。
・クリスマスバザーの翌日は後片付け、翌々日が終業式。
・クリスマスバザーを最後に生徒会は残務整理に入る。
・生徒会改選は冬休み後の2月初め。選挙運動は1月下旬から2月にかけて。

・寄宿舎はマンション風の五階建てでコの字型。
・寄宿舎の東側が中等科生のクララ舎、西側が高等科生のアグネス舎。二階の一部から五階の一部まで生徒が住んでいる。各階にクララとアグネスを仕切る木の扉があり、お互いの行き来は舎則で禁じられている。三階は、トイレと洗面所で終わるクララ舎と、315号室と316号室から始まるアグネス舎の間に扉がある。
・居室の他に、自由室、電話室、黙学室(二階)、乾燥室、洗濯室、アイロン室、シーツ室、家庭教師室(通称「ガラスの部屋」)、相談室、事務室、シスター詰所、シスター専用のトイレ、茶室などがある。
・クララの名は作中当時より20年前(1960年頃か)、アグネスの名は昭和6年(1931年)の学園創立時からの由緒正しい名前。
・クララ舎は舎長が一人部屋、階長が二人部屋、その他は四人部屋。
・アグネス舎は半分が二人部屋、半分が一人部屋。黙学室はなく自室で勉強をするシステム。
・朝6時起床。点呼後に掃除。
・クララ舎伝統の言い回しがある。「勝負が決まらない(便秘)」「天国的」「地獄的」など。
・第一門限は16時。生徒会や部活動、図書館での勉強に限り第二門限は17時半。文化祭直前は舎監長と事務室と食堂のおばさんに届けを出しておくと門限外の帰舎が認められ、食事も取っておいてもらえる。
・夕食は18時から。
・19時30分から21時40分までは黙学室で自習(シスターの監視付き)。20時半に一旦休憩あり。22時消灯。消灯後も勉強したい人のための延燈は23時半まで。
・アグネス舎の延燈は四、五年生は午前1時半まで、六年生は午前3時まで。
・クララ舎では、帰舎後に生徒同士が居室を訪ねることは禁止(日曜日は可)。
・夕食時には、アグネス舎長が大きな食卓ベルを振り、鈴が鳴り止むと同時に全員目を閉じて約10秒ほど黙祷する。シスターが「主願わくは我らを祝し、また主の御恵みによりて我らの食せんとするこの賜を祝したまえ」と呟く。
・クララ舎最高学年には、洗面所で順番を譲られる、廊下で下級生に挨拶される、下級生に部屋の掃除を頼めるなどの特権がある。
・途中入舎生は上級生に尽くす下級生時代を経ることなく上級生特権を享受する立場になるため、入舎テストとして三年生部会で決定した課題をクリアするという義務がある
・昨年度の中途入社生は一人(川崎さん)で、入舎テスト課題は北海大学啓明寮の窓ガラスを一枚拝借すること。無事成功。
・今年度の入舎テスト課題は、大食堂から調理室、食糧庫へと入り込み、三年生舎生、クララ舎の事務シスター、ハウスマザー、舎監シスター計45人分のドーナツを作り、大皿に盛って大食堂の真ん前の舎監シスターのテーブルに置くこと。
・大食堂の鍵は全部で五つ(舎監シスターの詰所、金庫の中のマスターキー、舎監長シスター・マルガリータの腰の鍵束、アグネス舎長の相沢虹子女史、クララ舎長の有馬美貴子)。食糧庫に鍵はない。調理室の鍵は調理師のおばさんが一つずつ、非常用に舎監長シスター・マルガリータが一つ所有。以前は詰所にも置いてあったが、頻繁に食糧庫破りが起きるので寄宿舎には鍵は置かないことにしたとのこと。
・クララ舎の夜間巡視は消灯時の22時、24時、午前2時に一回ずつで計三回。
・大食堂は二階。コの字型の背の部分にある。舎監室は中庭を向いている。
・寄宿舎では一ヶ月に一度、保護者に舎生の日常の報告をする生活書を送付する。男性の「親戚」からの電話が度重なる場合は備考欄で問い合わせることもある。また、父親や兄弟の名前で来た手紙も消印をチェックされ、住所との相違が認められると事情を聞かれ、兄弟の名前での手紙が頻繁な場合も生活書で問い合わせられる。明らかな偽名での手紙は即開封。本名で親族以外の男性から手紙が来た場合は呼び出され、シスター三人に取り囲まれて間柄を問われる。反抗的な態度を取ると手紙は差し止めとなり、生活書で保護者に問い合わせられ、さらに要注意人物としてブラックリストに載る。差出人の男性を知らないと答えた場合は、中身をその場で読み上げさせられる。
・寄宿の中庭の隅にマリア像を収めた厨子がある。
・寄宿には、クララ舎とアグネス舎を合わせて約300人が居住。塾やお稽古事に通う人もおり、家庭教師につく人もいる。家庭教師は約半分が徳心大学のお姉さま方、もう半分はほとんどが他大学の男子大学生。全部で14~5人いる男性家庭教師は、舎生たちから大奥になぞらえて”上様”と呼ばれ、上玉、中玉、小玉、石っころ、と四段階にランク分けされている。
・家庭教師室は寄宿に入ってすぐ左側、シスターの詰所の斜め向かいにある。10畳ほどの洋間の壁が全てガラス張りで、通称「ガラスの部屋」。帰舎した舎生が自分の部屋に行くために必ず通る場所にあるため、家庭教師についていない舎生も全ての上様の顔を知っている。

桂木しのぶ(かつらぎしのぶ):徳心中等科三年。通称「しーの」。三年三組。1月8日生まれ。吉屋信子や大林清、西条八十や北条誠などの少女小説を愛する。毎晩読む愛読書は吉屋信子の『紅雀』。二年までは自宅通学(新琴似から)だったが、三年進級時に父親が九州延岡に転勤になり、クラスメイトから引き留められたことや学園への愛着、憧れのシスター・アンズヴェリスがクララ舎のハウスマザーを務めていたことなどから寄宿舎に入って学園に残ることを決心。クララ舎305号室。二段ベッドの上段。入舎テストでは大食堂、調理室、食糧庫の鍵の入手を担当。昨年度の生徒会議長山崎さんの推薦により中等科生徒会書記を務める。成績は300人中20番以内を死守。二年時の文化祭で中等科一のスター”憧れの丸井さん”につられて中等科演劇「人魚姫」に人魚姫役で出演。高等科のお姉さま方を差し置いて主演女優賞を受賞。クラスメイトから徳心芸能界のスターとからかわれる。今年度の文化祭では高等科の古文研有志演劇「佐保彦の叛乱」に”奇跡の高城さん”につられて佐保姫役で出演。中等科演劇「みずうみ」エリザベト役の夢見の衣装担当。クリスマスバザーにはリスとひよこのマスコットを20個出品。初恋は小学二年。桂木家は浄土真宗。姉に高三の利恵子、弟に中二の建(たけし)、はとこにお見合いをした小優美(こゆみ)さんがいる。レッド・バトラー、エドワード・ロチェスターが好み。
※新琴似から藤女子に通うには麻生(あさぶ)駅から札幌市営南北線で北18条駅まで3駅。通学時間約20~30分。

紺野蒔子(こんのまきこ):徳心中等科三年。通称「マッキー」及び「鉈ふりのマッキー」。三年五組。旭川出身の編入生で4月からクララ舎生。清酒男道酒造社長令嬢。入舎テストではドーナツの作り方の調査と調理を担当。深川の茶器がお気に入り。学園に咲く花を刈り取ってドライにして詰め込んだクッションを作るのが趣味。文化祭の中等科演劇「みずうみ」ではラインハルト役。寄宿舎生の家庭教師西藤さんに初恋。高校生になったら告白すると誓い、一日に三回以上は鏡を見ないという鏡断ちをする。クリスマスバザーには極上の緞子やビロードのカバーに房がついた、学園の花(薔薇や沈丁花、くちなしやぼたん)入りデカダンクッションを出品。バザー当日は模擬店のウェイトレスを担当。学年一の美人だが、その激しい美意識のために暴走することもしばしばで、旭川時代にはひよこから育てた鶏のつがいが雄同士であったことに憤慨し、鉈を持って男道公園内を追いかけ回して窒息死させたり、父の愛犬サー・トーマスにオレンジの似合う黒い犬という美しい夢を託し、自ら餌係となってオレンジしか与えず、空腹で錯乱状態になったサー・トーマスは残飯を漁った結果食中毒となり命を落とした。その事件で蒔子を責める両親に不満を募らせ、真夜中に奇声を上げて愛情を試すといった数々の奇行の末に両親から家を出て寄宿に入るか下宿するかの二択を突き付けられ、徳心学園に編入しクララ舎生となる。

佐倉菊花(さくらきっか):徳心中等科三年。札幌市内の公立中学から編入。自宅通学も可能だが寄宿に入舎。三年一組。市内に12のチェーン店を持つ老舗うどん処「讃岐屋」の五人兄妹の末っ子で一人娘。クララ舎306号室。二段ベッドの上段。入舎テストではクララ舎の見取り図やシスターの巡視時間の調査を担当。文化祭の中等科演劇美術担当。漫画家志望。文化祭の一日目に秋田書店の『プリンセス』努力賞受賞の連絡を受ける。花郁悠紀子のファン。クリスマスバザーにはアニメの似顔絵や可愛い女の子のイラストなど10枚出品。11月の投稿作品で優秀賞を受賞。デビューまで秒読みとなる。二番目の兄が北海大学の経済学部四年でサイクリング部のため、怪我で通院するしーのの送り迎えを申し出た寿家光太郎(北海大学の学生)の身元を確認してもらった。三番目の兄は成績優秀のため父親に医学部に行くよう勧められたが、義理で受けて合格した国立の医学部を蹴って第一志望の某大電子工学部に入学。怒った父親に学資の一切を打ち切られるも、奨学金とアルバイトで一年を過ごして許されたという実績を持つ。その兄を見習って漫画家の夢を頭ごなしに反対する父に内緒で寄宿舎暮らしの間に漫画家として実績を上げることを目標としている。実家へはポールタウン出入り口近くのバスセンターから米里行のバスに乗る。一丁角のほとんどが佐倉家の敷地であり、石塀が張り巡らされている。門から玄関まではたっぷり20メートル。大豪邸というほどではないが円山あたりでよく見かける古い由緒のありそうな木と煉瓦が微妙に組み合わさった中三階建ての瀟洒な屋敷。玄関の横にはサンルームを兼ねた温室があり、コンピュータによる室温調整をしている。徳心学園へは約40分で自宅通学も可能。

園田三巻(そのだみまき):徳心中等科三年。中等科生徒会長。三年五組。自宅通学生。二年時は生徒会副会長(一年生時に選出)。中等科文芸部誌「柊」掲載で話題となった短歌から着想を得て、文化祭の中等科演劇の演目をラブストーリーという選定基準のもと「野菊の墓」(しーのの民さん、樺山さんの政夫)または「みずうみ」(しーののエリザベト、マッキーのラインハルト)のイメージで高等科の大導寺さんに脚本を依頼。アイデアと実行力、統率力に定評がある。
有馬美貴子(ありまみきこ):徳心中等科三年。愛称「ミコ」から転じて通称「有間皇子」。三年二組。クララ舎長。クラス委員長。
衿子(えりこ):徳心中等科三年。文化委員長兼中等科文化祭実行委員長。三巻、有間皇子と並ぶ中等科の有力者。
春日(かすが)さん:徳心中等科三年。三年五組。クラス委員長。マッキーが授業中に窓の外を見てぼんやりしているのを注意した。
時代(ときよ):徳心中等科三年。クララ舎生。一年生の江奈が乾燥室で四年生に叱られているのを、自由室に知らせに来た。
峰尾容子(みねおようこ):徳心中等科三年。三年三組。しーののクラスメイト。花屋の娘。一年生坂田江奈の洗濯物事件の際にしーのの仲介で翌日に薔薇一輪を手配。
万里(まり):徳心中等科三年。三年三組。しーののクラスメイト。体育大会でしーのの騎馬になる。
江っちゃん(えっちゃん):徳心中等科三年。三年三組。しーののクラスメイト。体育大会でしーのの騎馬になる。夢見にハチマキで目を打たれ、騎馬を組んでいた手を放してしまう。
士部ちゃん(しべちゃん):徳心中等科三年。三年一組。クラス委員長。授業中の菊花の居眠りに苦笑いをしていた。
モリ:徳心中等科三年。クララ舎生。しーのと同室。
克子(かつこ):徳心中等科三年。中劇「みずうみ」演出担当。古文研の「佐保彦の叛乱」のしーのの衣装に長さ15センチはありそうな銅色の板きれのような耳飾りを提供。
戸板(といた)さん:徳心中等科三年。中劇「みずうみ」ラインハルト役のマッキーの衣装担当。
佳雨子(こうこ):徳心中等科三年。中高合同チェス同好会会員。騎士が大好き。自由室で誰かれとなく捕まえてチェスの相手をさせるが、チェックメイトをかけるのは騎士だけというポリシーがあり、僧正か兵卒でチェックメイトをかけられる絶好の機会でもチェックメイトをかけないという変わった癖がある。
マヨ:徳心中等科三年。一二年生時のしーののクラスメイトで親友。外部受験のための特別編成クラスに入る。西高志望。
垂沢(たらさわ):徳心中等科三年。タラちゃん。一二年生時のしーののクラスメイトで親友。外部受験のための特別編成クラスに入る。北高志望。将来は法学部への進学を希望。家政部部員。
三上(みかみ):徳心中等科三年。中等科図書委員長。しーの達の入舎テストの際に頼まれて図書館在館証明書を偽造する。
藤子(ふじこ)さん:徳心中等科三年。三年二組。かな文字書道の有段者。クリスマスバザーに散らし書きを出品。来場の父兄に慎ましやかにしかし確実に売れた。

鈴木夢見(すずきゆめみ):徳心中等科二年。5月からクララ舎生。中等科バド部の次期エース。両親の海外出張(二年間)のため二年進級時より市内の伯母宅から通学することになるが、かねてから慕っていたしーののクララ入舎を知って自身も一ヶ月遅れでクララに入舎。しーのに対しては素直になれずに反抗的な態度ばかり取ってしまう。体育大会の騎馬戦ではしーのに怪我をさせてしまい、通院に難儀しているしーのの送り迎えをしてくれるよう従兄の光太郎に頼む。色白ですらりとした美少女で、勝気そうな大きな眼の上の長いまつげは約2センチ。文化祭の中等科演劇「みずうみ」ではエリザベト役。舞台上でマッキー提供の深川の茶器を割る。クリスマスバザーでは模擬店のウェイトレスを担当。
角田律子(つのだりつこ):徳心中等科二年。中等科生徒会議長。自宅通学生。ここぞという時に無表情でぼそりと突っ込む。しーの曰く「小面憎い」。
加納三矢(かのうみや):徳心中等科二年。クララ舎生。夢見の親友。
豊ちゃん(とよちゃん):徳心中等科二年。中等科生徒会会計。電卓を叩くのが趣味。
和子(かずこ):徳心中等科二年。中等科生徒会副会長。
鳥居(とりい)さん:徳心中等科二年。クララ舎生。菊花と向井さんの噂を洗濯室でしていた。
新崎朱美(しんざきあけみ):徳心中等科二年。生徒会役員選挙で会計に立候補したものの豊ちゃんに大差で敗れて以来、何かと生徒会活動にケチをつける。目立ちたがり。去年に続いて中劇にしーのが出演するという噂が広まると、一部のメンバーによる中劇独占を糾弾する旨の抗議文を提出。

坂田江奈(さかたえな):徳心中等科一年。クララ舎生。乾燥室で四年生の上段に自分の洗濯物を干し、下着が四年生のブラウスの上に落ちていたことから叱責を受ける。クララ舎長有間皇子の取り成しで、翌日から三日間午後5時半までに当該の四年生に薔薇を一輪ずつ届けることになる。花屋のクラスメイトがいるしーのに最初の日の薔薇を手配してもらったことがきっかけでしーのに懐き、黙学室で勉強を見てもらうなど親しくなる。
文子(ふみこ):徳心中等科一年。標茶出身。214号室。江奈と仲良しで、一緒にしーのに勉強を見てもらう。捨て猫ユリウスの世話をするために寄宿破りを繰り返していたところをしーのに見つかる。

相沢虹子(あいざわにじこ):徳心高等科五年。通称「きらめく虹子女史」。アグネス舎長。高等科古典教師浅川圭一先生のファン。浅川先生に近づくために古典文学研究会を立ち上げる。入舎テストの際にしーのに便宜を図ったことで恩を売り、文化祭の高等科古文研有志演劇「佐保彦の叛乱」への出演を強引に承諾させる。「佐保彦の叛乱」では円野姫役。佐保姫の衣装に唯一持っているフォーマルドレスのショールを「汚さないでね」と哀願しながら提供。中等科時代は生徒会長とクララ舎長。高等科では一切の役職から身を引くが、実権を握っているため陰の生徒会長と呼ばれている。喫煙者。アグネス舎四階の舎長室に住む。
加藤白路(かとうしろじ):徳心高等科五年。通称「清らなる椿姫」。アグネス舎生。楚々とした佳人で学園でも十本の指に入るスター。古典文学研究会会員。文化祭の古文研有志演劇「佐保彦の叛乱」ではオリジナル脚本と演出を担当。もめんの黒糸をほぐし、一本一本に爪切りで切れ目を入れた佐保姫のクライマックス用の鬘を二ヶ月かけて作った。「清らなる…」の渾名はデュマの「椿姫」からではなく自分の世界に酔うと唾を飛ばして喋りまくることを揶揄されてのものだが、下級生が彼女をあまりに神聖化しているため同学年の仲間たちは真実を秘している。時には血圧が上がって卒倒することもある。高城さんとは幼馴染み。寄宿破りの常習。クリスマスバザーではミートパイの売り子を担当。
高城濃子(たかぎのうこ):徳心高等科五年。通称「奇跡の高城さん」。自宅通学生。五年六組。白路とは幼馴染み。喫煙者。徳心の中等科高等科を通じて文句なしの人気ナンバーワンの麗人。173センチの長身に、女性らしい丸みに欠けた骨ばった少年のような体つき。北欧貴族を思わせる彫りの深い造作の大きい顔立ちで、男もびびるハスキーボイス。10人中9人が振り返るスーパースター。人見知りで面倒くさがりのため、自分からはほとんど表に出てこない。通称大奥と呼ばれる50~60人からなるファンクラブがある。
吉田美子(よしだよしこ):徳心高等科五年。アグネス舎生。旭川出身。実家はマッキーの実家の二軒隣。近所に住むマッキーの過去と性格をよく知っているため、乾燥室で白路のハンカチにマッキーの下着が引っ掛かったことが騒ぎになった際も真相を瞬時に理解してマッキーの企みを阻止した。
向井(むかい)さん:徳心高等科五年。アグネス舎生。高等科文芸部副部長。336号室。菊花の漫画家修行のためにアグネス舎の自室を提供。
須貝(すがい)さん:徳心高等科五年。体育大会の騎馬戦でしーのとともに優勝の最有力候補。スポーツ万能。高劇「ピーターパン」に主演するはずだったが、稽古中にバルコニーから落ちて捻挫し降板。
笠井(かさい)さん:徳心高等科五年。奇跡の高城さんの大奥総取締役三代目。香道部副部長。
井原(いはら)さん:徳心高等科五年。手芸の天才で、昨年のクリスマスバザーでは自ら製図を取って幼子のキリストを抱くマリアを半年がかりで編み込んだレースのテーブルクロスを出品。徳心出身の知事夫人に万に近い価格で競り落とされた。
長谷尾章子(はせおあきこ):徳心高等科五年。アグネス舎生。418号室。寄宿破りの常習。舎内での私服が派手でシスターに注意されたり、パーマをかけて謹慎処分を受けるなど要注意人物。舎内一斉の抜き打ち所持品検査でお酒が見つかったことも。11月に寄宿破りが露見して退学となり、現場に偶然居合わせたしーのを逆恨みして仕返しの機会を狙う。北修女子に編入。
都築(つづき)さん:徳心高等科五年。文化祭の古文研有志演劇「佐保彦の叛乱」では大王役。姉の友人の夫の義理の姉が札幌美容学校の講師のため、角髪の結い方を習う。八世紀頃の髪型を復元した鬘の借り出しも手配。
清水(しみず)さん:徳心高等科五年。文化祭の古文研有志演劇「佐保彦の叛乱」では千速役。
太田(おおた)さん:徳心高等科五年。文化祭の古文研有志演劇「佐保彦の叛乱」では八綱田役。

丸井(まるい)さん:徳心高等科四年。自宅通学生。中等科時代は一番のスターでしーのの憧れの人。中劇「人魚姫」の王子役で主演男優賞。
津村(つむら)さん:徳心高等科四年。昨年の中等科演劇「人魚姫」で海の魔女役。ユニークなキャラクター俳優ぶりを発揮。
妹尾(せのお)さん:徳心高等科四年。昨年の中等科演劇「人魚姫」で演出を担当。叔母が地方劇団の主役級の女優で、その叔母直伝のスパルタレッスンを実践した。
大道寺(だいどうじ)さん:徳心高等科四年。昨年の中等科演劇「人魚姫」で脚本を担当。今年の中等科演劇にも脚本を書く約束を三巻が取り付けた。去年の中等科図書文芸部部長。
湯浅まりこ(ゆあさまりこ):徳心高等科四年。自宅通学生。しーのに手紙を送った大津くんの親友ヒロシとつきあっている。しーのを「明るくて誰からも好かれる子」と紹介。しーのに大津くんと会う約束を強引に取り付けるが待ち合わせ場所を伝達ミス。
山崎(やまざき)さん:徳心高等科四年。昨年度生徒会議長。しーのを生徒会書記に推薦。

ありさ:白系ロシア人二世と純血日本人とのクウォーター。通称「ありさ嬢」。美人。高劇の「ピーターパン」に、怪我で降板した須貝さんの代役として出演。演技力はあまりない。
松子(まつこ)さん:この上なく優雅な身のこなしをする花柳流の名取りで、学生舞踊家。通称「松子師匠」。

シスター・アンズヴェリス:昨年度までのクララ舎ハウスマザー。今年度から言語学の講師格で大学に異動。ドイツ人で誇り高い鼻筋と顎、秀でた額を持つ。クリスマスバザーにお手製のクッキーを出品。
シスター・チェリーナ:クララ舎の新ハウスマザー。通称「微笑みのシスター・チェリーナ」。地獄耳地獄眼。シスターにしておくにはもったいないほどの臈たけた美女だが、舎監になるために生まれてきたような人で、相談室ではにっこり微笑みながら生徒をじわじわと締め上げる。
シスター・マルガリータ:クララ舎監長。
シスター・マリア:看護係。ナースの資格を持つ。得意技は「快楽のいちじく浣腸」と「戦慄の直角注射」。生徒に恐れられている。
シスター・ヴェロニカ:クララ舎のシスター。黒装束。舎生の電話に聞き耳を立てる。大津くんの手紙の件でしーのを相談室に呼び出す。
シスター・アルベルタ:クララ舎のシスター。大津くんの手紙の件での相談室呼び出しに同席。
シスター・テレーゼ:クリスマス・バザーにお手製のポプリを出品。
シスター・アンジェリス:クリスマスバザーにお手製の洋梨とトマトと人参のジャムを出品。

花笠(はながさ)先生:家政部顧問。かぼちゃまんじゅうやそば粉クッキー、みそクリームパン、ほうれんそうとにんじんのプディングなどの献立を考案しては家政部部員を嘆かせている。
浅川圭一(あさかわけいいち)先生:去年までの高等科の古典教師。虹子女史の憧れ。今年度から大学部に助教授格で招かれて高等科を去る。
村置賢二(むらおきけんじ)先生:高等科の古典教師。
大磯啓子(おおいそけいこ)先生:高等科の歌留多部顧問。

寿家光太郎(すけこうたろう):北海学院大学法学部一年。サイクリング部。夢見とは母方の従兄妹同士。体育大会で怪我をしたしーのの送り迎えを夢見に頼まれたのをきっかけに、しーのと親しくなる。夢見に内緒でしーのを映画に連れて行ったり、おみやげにケーキを買ってあげたりする。寄宿のしーのへの手紙はサイクリング部の女性に宛名と差出人を代筆してもらっている。年末から1月の末までニセコのスキー場でバイト。
西藤進(さいとうすすむ):教育大一年。二年生の寄宿舎生の家庭教師。”上様”の中玉・小玉クラス。しーのが長谷尾さんに脅されていたところに偶然居合わせ、クリスマスバザーでのボディーガードを引き受ける。優しくて気さく。容姿は十人並みで光太郎より落ちる。
大津雅文(おおつまさふみ):東高の一年。札幌市中央区在住。文化祭で古文研の劇を見てしーのを見初め、寄宿への手紙でデートを申し込む。陸上部。身長は約167.8センチ。湯浅まりこの彼氏のヒロシとは中学時代からの親友。
三田(みた)さん:秋田書店の編集。菊花の担当。

 蒔子はレポート用紙を取り出し、私達に二枚ずつ配った。
「それはドーナツのつくり方のメモ。調べてみて驚いたけど、ドーナツっていろいろつくり方があるのよ。知ってた?豪勢なのになると小麦粉は別としても、バターだの卵だの牛乳だのふくらし粉だの、ごっちゃり使うの。どうでもいいのになると水とサラダ油と卵だけなのにね。で、私は余裕をみて六十個分の分量に計算しなおして書いてきたから、これから三日間、暇さえあればこのメモを見て分量とつくり方を完璧に暗記し、忍び込んだ時はすぐにも作業にかかれるようにしようね」
 私と菊花はレポートに眼をおとした。
「なあに、これ」
 菊花が叫んだ。
 私も驚いた。
 蒔子は豪勢なドーナツのつくり方のほうを書き写してきたらしく、バターをすってクリーム状にするだの、白っぽくなるまでまぜるだの、タネは一晩冷蔵庫にねかせるだのとレポート用紙二枚に渡ってえんえんと書いている。
 さっそく菊花が異議を申したてた。
「紺野さん、私達はお料理講習会に出席するんじゃないのよ。シスターの眼をかすめて忍び込んで、ひっそりとドーナツを揚げるの。バターをする、なんて簡単にいうけど、あれ、すごい肉体労働だわ。まして一晩冷蔵庫にねかせるなんて、どういう了見で書き写してきたのよ」
----------
『クララ白書』 第一章 ドーナツ騒動 P27-28


ここ大好き。あードーナツ食べたくなる!

 蒔子はこのアイデアにすっかり気をよくしたらしく続けた。
「で、私さらに考えたのよ。あの小さな窓を通り抜けるからには、ごもごもした厚手の服なんてのを着てちゃだめだって」
「そりゃそうね。ジャージか何か着ようか」
「それもいいけど、もっとうってつけのがあるわ。体操とかダンス授業のために買わされたレオタードがぴったりだと思わない?」
「レオタード!?」
 私はあっけにとられた。
「だいたいスカートやジーパンだと歩くたびに衣ずれの音がするわ。その点、レオタードなら抜群よ。それにスリッパだとぱたぱたと音がして響くから、ダンス用のバレエシューズをはくわけよ。あれは底に鹿皮をはってあるから、すべらないし音はしないしね。これはいいと思わない?黒いタイツにレオタード、足にはピンクのバレエシューズできめて、窓を通り抜けるなんて」
 あまりのあほらしさに口もきけずにいると、菊花が静かに頷いた。
「なかなか、いいわね」
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『クララ白書』 第一章 ドーナツ騒動 P37-38


入舎テスト決行時のコスチューム決定シーン。今ふとこれってもしかしてキャッツアイの影響があったりしたのかなと思って調べてみたら、キャッツアイの連載は1981年から(クララは1980年)だったので、このシーンは全く氷室さんのアイデアということに。女子三人だし決行時にはさらにマッキーが腰にスカーフ巻いてくるとこといい、先取りというか予言というかすごい。

「なに?何か言った?」
 私ははっとわれにかえって顔を上げた。
 光太郎が信じられないという顔で、私を覗き込むように見ていた。
「くるみ屋を通り過ぎたよ。例のシフォンケーキ、買っていらないの」
「シフォン……?ああ、いる、いるわよ。買って。菊花とマッキーに一個ずつ、私に二個で計四個」
 私達は後戻りしてくるみ屋に行き、知る人ぞ知るシフォンケーキを買った。これは私の大好物で、光太郎は会うたびにいつも買ってくれるのだ。
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『クララ白書』 第四章 ストレインジャーⅡ P119


くるみやは本店が兵庫県の明石市本町、支店も明石近辺と札幌(なぜか)にしかないケーキ屋さん。昔「くるみや」の「シフォンケーキ」をよく乗り降りしてた明石駅で見つけた時は、偶然店名が同じなだけでまさか本当にしーのが好きなケーキそのものだとは思わなかった。

神戸洋菓子職人(神戸~阪神間の洋菓子ポータルサイト) くるみや
http://kobe-sweets.jp/shop/nishi/kurumiya/ (Archive)
神戸洋菓子物語(神鋼不動産) くるみや本店
http://www.kobelco2103.jp/apolan/backnumber/kobe_story/20070328/ (Archive)
昭和32年(1957年)創業ということは今年で創業58年。すごいなあ。

>是非おすすめしたいのがシフォンケーキ。漫画・映画化もされた氷室冴子さんの著書「クララ白書」にも登場したこちらのシフォンは、柔らかくしっとりした食感のスポンジと、飽きがこない生クリームで作られており、一度食べたらとりこになる事間違いなし。

そうなのそうなの。
これ買う時はやっぱり、四つじゃないとね。

クララ白書 くるみや シフォンケーキ

菊花とマッキーに一個ずつ、しーのに二個で計四個!

氷室冴子 クララ白書 くるみや シフォンケーキ チーズケーキ

しーのが時々食べてるチーズケーキも買っといた。うふふ。
ふわふわのシフォンはフォークだけどすくう感じで、クリームと一緒にふわんふわんと口に運べる。ほんとに二つぐらい軽く食べちゃえる。おいしい。

くるみやは今まで明石駅ステーションプラザ内にある店舗にしか行ったことなかったんだけど、久しぶりに行ってみたらステーションプラザがほぼ全館改装中だったので、今回は明石駅から南に徒歩10分の本店に初めて行ってみた。駅からまっすぐ南に下って小さなハーバー(淡路と明石を結ぶ高速船の乗り場がある)につきあたって左。ステーションプラザ内の店舗はどうなるのか本店で尋ねたら、改装後の2015年秋にまた出店しますとのこと。よかった。思いがけず歩いて暑かったのでケーキ買った後にソフトクリームも買って停泊してる漁船見ながら木陰で食べました。どうして明石から札幌に出店したんですか?とか当時の札幌オーロラタウン店はどんな感じだったんですか?とかクララ白書にお店が登場したことについて、とかも聞いてみればよかった…と帰りの電車の中で思った。あぁー…。

今回ツイで「くるみや シフォン」画像検索して知ったけど、私が買った明石のくるみやのシフォンのクリームは周りをくるくるなだらかに撫でつけた感じ、札幌のくるみやのシフォンは周りのクリームをツンツン角立てさせた感じだった。こんな違いがあったとは。作中でしーのが食べてた、たぶん昔氷室さんも食べたであろうくるみやのシフォンもツンツンしてたのかなあ。

 お手伝いさんが現れ、蓋付きお茶碗のお茶と、花月堂の梅仙女を出した。
 さすが礼儀にうるさい家、二月だから梅仙女を出すとは凝ってるなと感心している時、お手伝いさんと入れ替わりに菊花のお父上がご出座あそばされた。
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『クララ白書』 第四章 菊花危機一髪 P212


菊花の実家を訪れたしーのとマッキーに出された、名前からして美味しそうな「花月堂の梅仙女」。「札幌 花月堂」で検索するとこんな記事が。

創業159年の花月堂負債6億円 民事再生手続申立て (2010/11/24)
http://otaru-journal.com/2010/11/1124-1.php (Archive)
事再生の花月堂 18店舗閉鎖・従業員109名を解雇 (2011/01/13)
http://otaru-journal.com/2011/01/0113-4.php (Archive)

>159年の歴史を持ち、北海道最古の企業として知られる同社は、1851(嘉永4)年、越後国新発田藩のご用菓子舗・杉本花月堂として創業。1904(明治34)年に小樽市にて杉本花月堂を開業し、1946(昭和21)年に株式会社杉本花月堂を設立した。
>1950(昭和25)年に札幌に進出したが、1960(昭和35)年に1億円の負債を抱えて倒産。この後、1972(昭和47)年に稲穂大通商店街沿いに本店を移転し、1981(昭和56)年には、社名を現在の花月堂に変更した。

江戸時代に新潟で創業したお店だったとは。公式サイトが閉鎖しているので、正しくここだったかどうか、「梅仙女」というお菓子があったかどうかわからないけど、雰囲気からしていかにも菊花のお家で出てきそうなお菓子がありそう。食べてみたかったな「梅仙女」。

 ただ髪型は考えてもらわなくちゃ。そっちに行ってから、まだお気に入りの美容室がめっかってないんでしょう。夏休みに帰った時、変に盛り上がったママの髪型を見て愕然としたもの。ママはただでさえ上背があるんだから、髪がああもふくらんじゃ完全な頭でっかちで、バランスが悪いのよ。こっちにいた時は、北の研美美容所がママの顔だちや体型にぴったりの髪に結ってくれたのにね。
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『クララ白書』 第五章 その前夜(イブ) P233-234


しーののママ行きつけの美容院「北の研美美容所」は、たぶんこちらかと。
ビューティーサロン北の研美
http://kitanokenbi.com/ (Archive)

氷室冴子 クララ白書 北の研美

特徴的な名前だからもしかしてと思ったら本当にあった。しかも藤女子寄宿舎の真裏とか。氷室さんも藤女子大時代に行ったことあるのかな。

「その顔じゃ昨夜はろくすっぽ寝てないみたいね。何にでも興奮して寝つけなくなるんだから、ガキんこもいいとこだわ。で、どうなの」
「どうって、何が」
「当然、会いましょう、なんて書いてあったんでしょ。いつ会うのよ」
「あ?」
 あたしは一瞬わけがわからずぼんやりし、あわてて制服の胸ポケットから二つ折りした手紙を出して広げた。
『もしよかったら、一度会ってくれませんか』と、確かに書いてある。
 あたしは呆然と手紙を眺め、次の瞬間、ああっ!と叫んでしまった。
 ここに至って、あたしは眼の前で風船が割れたごとくに、はっと現実に眼覚めたのだ。
 そうだったのだ。
 生まれて初めてのラブレターに感きわまって、やったやったと狂喜乱舞してたけど、よくよく考えたら、大津くんと会うという現実問題が控えているのだ。今の今まで、それをすっかり忘れ果てていた。
 あたしの顔から、すうっと笑いが消えた。
「会ってくれませんか、だって。会ってくれませんかって書いてあるよ、三巻」
「今さら何を言ってんのよ。そんなのあたりまえじゃない。あんた今まで、何を喜んでたの」
「手紙……もらったから……嬉しくって、さ……」
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『クララ白書 ぱーとⅡ』 第一章 ラブレター大作戦 P31-32


人生初めてのラブレターをもらって浮かれまくるしーのと盟友三巻。何回読んでも笑う。

「園田三巻」という名前も大好き。どこから出てくるんだろう、「みまき」なんて名前。氷室さんの作品ではよく変わった名前が出てくるけど、このシリーズの「白路」や「濃子」もすごいよね。ルビがたまに混乱してか間違ってか(私の持ってる版では)「しらじ」だったり「しろじ」だったり、「のうこ」だったり「こいこ」だったりする。「白路」なんて人の名前なのかと思うけど、検索してみると『赤毛のアン』(村岡花子訳)に「歓喜の白路 "the White Way of Delight"」という言葉が出てくるらしく、『赤毛のアン』といえば、氷室さんが『アグネス白書』のあとがきで、一人硬派を貫いた中学時代を過ぎて、高校生になって初めて手にして衝撃を受けた、ちゃんと同じ少女時代に読みたかったと語っていた作品なので、もしかしたらそこからの名付けなのかもしれない。他作品では「鹿子」なんてのもあった。「しかこ」!もちろん何の由来の説明もなく、普通に「鹿ちゃん」って呼ばれてた(『さようならアルルカン』収録『アリスに接吻を』)。大好きなのは『クララ白書』に名前とチェスが好きな子という紹介のみで登場した「佳雨子」という名前。古風で斬新で、今でも忘れられない。

しーのと大津くんとのデートのくだりも大好きなのでまとめてみた。

・11月の日曜日の午後1時に三越地下入口で待ち合わせ。
・午後から雨のちみぞれで雪になるという予報。
・外套を学校指定の合コート、しーののおばさん手縫いの一単仕立ての濃紺の薄手のベルベットのマントにするかで検討した結果、マッキーが明るい空色の一単のコート(幼稚園のうわっぱりみたいなデザインの袖も裾もたっぷりとした可愛くて暖かいコート)と同色のベレー帽を提供。制服にコート、ベレーという少年少女合唱団風の出で立ちで出発。
・しーのは三越地下入口に待ち合わせの5分前に到着。公衆電話の横の壁によりかかって大津くんを待つが、1時10分を過ぎても大津くんは来ず、見知らぬ高校生風の男子に強引にナンパされる。隠れて見ていた光太郎と菊花、マッキーが飛び出して救出
・大津くんは湯浅さんから三越の入り口と聞いており12時から地上で待っていたが、しーのが現れないので1時半に地下に来てみてしーの達を発見。
・気まずい空気のまましーのと大津くん、付き添いの光太郎、菊花、マッキーの5人でポールタウンに入り、地下街の喫茶店「ノア」へ。光太郎の奢りでしーのはチョコレートパフェ(追加でサンドイッチとチーズケーキも)、菊花はフルーツみつまめ、マッキーはオレンジスカッシュを頼む。
・午後2時半、地下鉄の券売機の前で次の約束をすることなく解散。
・帰り道で一言もしゃべらなかったしーのに帰舎後菊花とマッキーが謝りに来る。自由室で三人でモロゾフのウィスキーボンボンを食べながら、窓の外の雪を楽しむ。
・しーの心の一首 『幼くて初めてのデート破れけり ウィスキーボンボン友と齧りつ』。

もし私が札幌に住んでたら、11月の日曜日に空色の服を着て12時55分から30分ほど三越地下入り口に立って人待ち顔でぼーっとして、それから地下街の喫茶店でチョコレートパフェとサンドイッチとチーズケーキを食べて午後2時半に地下鉄で家に帰り、窓の外を見ながら用意しておいたモロゾフのウィスキーボンボンを食べるという完璧な一日が過ごせるのに…!

『クララ白書』『アグネス白書』(だけじゃなく氷室さんの北海道が舞台の作品ほとんど)によく出てくる札幌三越と地下街のポールタウン、オーロラタウンはこちら。
http://mitsukoshi.mistore.jp/store/sapporo/index.html
http://www.sapporo-chikagai.jp/floorguide/
地図上ポールタウンの一番上あたりの三越と繋がってる箇所が、待ち合わせ場所としてしょっちゅう出てくる三越地下入口でいいのかな。三越地下1階じゃなくて地下2階と繋がってるみたい。喫茶店「ノア」は見当たらないなあ…。

 あたしは憂鬱気分で、ポールタウンをとぼとぼ歩き回った。
 街もすっかりクリスマス気分で、ポールタウンでもデパートでも、ジングルベルやホワイトクリスマスが流れている。
 喉が渇いたので、たから屋で瓶ごと温めたおいしーい町村牛乳を飲んでいた時、あたしの横でやっぱり町村牛乳を飲んでいる男の人が、いつぞや長谷尾さんに脅されていたあたしを助けてくれた”上様”なのに気がついた。
 確か教育大一年の西藤なんとかとか名乗ったっけ、などと思いながらあたしは声をかけた。
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『クララ白書 ぱーとⅡ』 第三章 クリスマス・ラプソディ P150-151


町村牛乳は、おそらく町村農場の牛乳のことかと。
町村農場 特選牛乳 小ビン
http://machimura.jp/products/detail.php?product_id=13/Archive
この牛乳は氷室冴子さんの別作品『雑居時代』にも、食品の銘柄にこだわる浪人生の美少年安藤勉の御用達として出て来ました。

上記以外で『クララ白書』に出てきたけど実在を確認できなかったもの一覧。

・入舎テストではこれに負けないものを作るとマッキーが言っていた「寿屋(ひさや)のドーナツ」
・寄宿舎近くの喫茶店「冬花(とうか)」
・体育大会で怪我をしたしーのが通院した学校指定病院「井沢病院」
・大津くんとの保護者同伴デートで入った地下街の喫茶店「ノア」
・しーのが温めたおいしーい町村牛乳を飲んだ「たから屋」
・菊花の実家に挨拶に行く礼儀作法を学ぶためにマッキーが小笠原流マナー本を買ってきた地下鉄近くの「太陽堂」
・菊花の父親とマッキーの父親が顔を合わせた会員制クラブ「ルーベデンス札幌」

一番気になるのが寄宿の近くにある「冬花」という喫茶店。夢見と光太郎が一緒にいるところをしーのが目撃する、この決定的なシーンからの展開が大好きなんだよね。

 確かいつもあの角を曲がって行く、などと思いながら角を曲がると、驚いたことに角を曲がってすぐ、五十メートルほど向こうにある小さな喫茶店の前にあの車が止まっていた。たぶん私を送ってくれた後、あの喫茶店に入ったのだろう。
 天の助けとばかり、私は走ってその喫茶店の前まで行き、中に入ろうとして何気なくガラスのドア越しに中をのぞいた。
 私は眼をみはった。
 よくわが眼を疑うというが、その時の私がまさにそれで、思わず眼をこすったほどだった。
 光太郎の前に坐って光太郎と話しているのは、あの鈴木夢見なのである。
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「寄宿から南に向かって二丁ほどいったところに『冬花』って茶店あるけど、今その横の電話ボックスからかけてるんだ。中で待っててもいいし、喫茶店が嫌ならその辺で車を止めて中で待ってるから」
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 寄宿を出てすぐ、鞄を持った夢見とすれ違った。今まで光太郎と会っていたのは、この感度のよい眼でしっかり見て確かなのだ。いったいどういうことなのか、これから光太郎をとっちめてやる、と夢見の後ろ姿に誓い、『冬花』に急いだ。
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『クララ白書』 第三章 下級生+1 P108、110、111


ここも、今はもうなくても約30年前に実際に大学生の氷室さんが通ったりしていた喫茶店なのではと予想して、ちょっとあたりをつけてみた。
光太郎がしーのをシスターに見つからないように寄宿の手前で降ろす、その手前がどの方向のどのあたりなのかわからないけど、寄宿を出て角を曲がってすぐ五十メートル、または寄宿から南に二丁という大体の位置に現在も喫茶店が一件。
http://tabelog.com/hokkaido/A0101/A010201/1000659/
この「珈琲工房あらびか」というお店は外観も内観も新しくて名前も違うけど、大体こんな場所で、こんなお店だったんじゃないかなあ…と想像してみる。

マッキーと菊花の父親が入っていた会員制クラブ「ルーベデンス札幌」はホテル名としてならヒット。

あのルーベデンス札幌が再生・札幌タイキビル(南4西6)がテナント募集開始/2004-09-25
http://dokei.net/conts.php?nid=127
>札幌中心部のススキノに位置し、1970年代後半にホテル「ルーベデンス札幌」として営業していた商業ビルが「札幌タイキビル」にビル名を変更、全館リニューアルを完了し、今年8月よりテナント募集を開始している。
>国道36号線沿いの立体駐車場「ジャンボ1000」と「タイムス24」に挟まれた立地で、近隣駐車可能台数は約1400台。地下鉄南北線すすきの駅(徒歩3分)、市電の電停資生館小学校(徒歩1分)から近く

記事によると2004年に全館リニューアル完了とのことなので作中に登場するクラブとしての面影は偲べないだろうけど、立地はもしかしたらここだったりするのかもしれない。


続いて、主人公たちが高等科に進級した『アグネス白書』(1981年初版)、『アグネス白書 ぱーとⅡ』(1982年初版)より。
書いてる間に熱くなってところどころ粗筋めいてしまいました。

・徳心学園は私立の女子校としては進学率90%以上の進学校。
・高等科から国立の医学部や法学部に進む人も多いが、公立の高校を受験し直す人も少なからずいる。
・三年の外部受験特別クラスで抜けた人数を補充するため、四年には各クラスに編入生が数人ずつ入る。四年三組には朝衣の他に7人ほど。
・編入生の多い四年生には特別に、寸劇会やピクニック、球技大会などの編入生歓迎行事がある。今年はピクニック。新学期が始まって2週間ほど経った日曜日にクラス全員で中島公園に行ってゲームをしたり乗り物に乗ったりして親睦を深めた。
・夏休みは7月25日から。
・文化祭は10月24-26日の三日間。最終日の10月26日は日曜日。
・中等科が中高合同実行委員会で確保した講堂使用時間帯は、まだ客足の揃わない午前9時~10時半と帰る客が多くなる午後4時~5時。最終日は高等科が使用権のほとんどを独占し、中等科はランチタイムで閑散とする午前12時~午後1時半のみ。三日間の各学年各クラスが催し物を行う教室の割り当ては、中等科は一階の北端、二階の東端、三階の真ん中と一貫性がなく、どこも階段や出入り口から離れていた。
・高等科生徒会は会長以下執行部員が全員五年生で占められるのが慣例。二月改選のため、新四年生となる中等科三年生は選挙にタッチできず、すぐに最終学年の六年生となる五年生はめったなことでは立候補しないためで、立候補者は主に四年生(二ヶ月後の五年生)となる。
・高等科文化祭実行委員会は各クラスの委員長18名と文化委員18名の36名が定員。3分の1にあたる12名の署名を集めれば高等科文化祭実行委員会の臨時開催を要求することができる。(生徒会会則第二項第五条『各委員会開催について』)
・文化祭での弁論大会では中等科の弁論制限時間が4分半、高等科は6分(去年までは一律5分)。
・文化祭での合唱大会での高等科課題曲は『雪のファンタジー』、中等科課題曲は『流浪の民』。
・文化祭での高等科の有志舞台はフォークとマジックショー。
・文化祭での高等科の催し物はお化け屋敷や占いなど。五年四組の「占いハウス」や五年六組の「カジノへようこそ」では三十円のくじ引きコーナーが評判。中等科の催し物は金魚すくいや英語紙芝居など。
・文化祭での中劇はモンゴメリの『果樹園のセレナーデ』で、主役キルメニイは3歳の時からヴァイオリンを習っている二年生の小浜さん。劇中でヴァイオリンが数曲演奏される。
・今年の高劇には四年生の出演者が一人もいない。
・合唱大会は24日。弁論大会は25日。
・三巻の発案で、中劇を当初予定の最終26日12時開演を中日25日の午後4時~5時半に移動。上演直前の午後3時から有志主催で『中劇出演者を囲み、激励する会』を開催。代わって最終日のランチタイムに合唱部と吹奏楽部の発表を持ってきて中等科勝利を印象付ける景気の良い演目入れて演奏。→合唱部と吹奏楽部のジョイントコンサート。合唱部は「歓びの歌」。
・文化祭はかつてないほどの中等科圧勝で終幕。文化祭後の実行委員反省会と実行委員会解散会で成田会長は三巻を名指しで批判。12月のバザーで再び故意に高等科の敗北を招くことは許されないと宣戦布告。三巻はバザーで成田会長が差別している四年生が全学年中売上トップとなって高等科勝利を導きつつ成田会長にも勝利するという方針を固める。
・クリスマスバザーは12月24日。
・クリスマスバザーでの高等科四年生の出品物の目玉は、マッキーの花びらクッション12個とポプリ、朝衣の中等科一~三年生の英語リーダー三学期分全訳コピー(単語やベーシックセンテンスの説明、例題解答、試験に出る㊙例文例題付き)、菊花の額入りサイン付きカラーイラスト8枚、宮脇さんの手製パイ12個、西ちゃんの籐細工、おスガの総ビーズ壁掛け。さらに三巻が奇跡の高城さんを口説き落として6年間ご愛用の革鞄を出品リストに加える。
・校舎の北側非常口から裏門までは30メートル足らず(しーのがバザー当日早めに登校して一階北の非常口の階段の陰にオーバーと靴の入った紙袋を隠した)。
・四年生出品物売り場は五組教室。
・クリスマスバザーの後片付けは午後6時まで。寄宿の門限は午後6時20分。
・三学期始業日は1月19日。六年生の大半が大学受験で自由登校になるため学園や寄宿から姿を消す。
・二月に生徒会改選。受付公示期間は三学期始業日の1月19日から一週間。
・冬休みが明けて18日後に選挙が終わり、結果が公表。その翌々日に高等科生徒会室で引き継ぎ会兼初顔合わせ。成田前会長は卒業試験準備のため欠席。会長は三巻、副会長は衿子、書記しーの、会計はモリ、議長は朝衣、副議長は原ちゃん。新生徒会の正式発足は、さらに翌々日の朝礼での任命式をもって。新生徒会の初顔合わせ時から卒業式の式次第の検討を開始。
・2月末に期末テスト。その直後に卒業式。
・卒業式前日に三回目の卒業式予行演習。

・アグネス舎は二人部屋と一人部屋のみ。
・新四年生は全員が二人部屋。
・高等科四年の編入生は53人、そのうち10人前後がアグネス入り。
・入舎式では舎監長シスター・マルガリータの訓話、ハウスマザーシスター・アンジェラの挨拶、新舎長池上歌子さんによる部屋割りのクジ引きがある。同室希望者は事前に申請。
・自由室は19時半に閉鎖される。
・舎監長室の隣がシーツ室、舎監長室の右隣が保健室。
・今年のクララ途中入舎は4人。入舎テスト課題は、一階の事務室、シスターの詰所、舎監長室の内部にそれぞれ「クララ万歳」、屋上からは「クララに永遠の幸あれ」の垂れ幕を下ろすこと。
・クララには一年生部会、二年生部会、三年生部会という学年別部会と、全舎生集会があり、舎内における様々な問題点を話し合う。舎生に問題がある時はまず一二年生部会で検討し、それでも解決できない場合は三年生部会に任せ、それでもだめな場合は全舎生集会が開かれる。全舎生集会はクララで最も権威ある議決機関なので、アグネス舎生もその決定を尊重する。
・クリスマスバザーの日の寄宿門限は午後6時20分。
・クララの退舎式は、終業式の日に自由室でお茶とお菓子を食べる。
・アグネスの退舎式は、卒業式が終わったら六年生はその足で帰ってきて、約20分かけて自分の部屋を掃除。大食堂で退舎生からのプレゼント、在舎生からの献花。その後、在舎生が大食堂から玄関までの廊下の左側に並んで、拍手とともに退舎生を見送る。在舎生を代表してアグネス舎長が挨拶。リハーサルもする。
・退舎式では、在舎生がアグネスに入ってきた退舎生を玄関で待ち受けて胸にリボンを飾る役4人、玄関から各部屋までの廊下の要所要所にさりげなく立って「お帰りなさい」を言う役20人、最後の掃除が終わる頃を見計らって各部屋のドアをノックし「お掃除は済みましたか」と言って回る役6人、退舎生を大食堂まで先導する者2人、退舎式の司会1名、退舎生からのプレゼントを受け取る者3人と、一人必ず何かの役につく。1月末までに役の希望を個別に提出する。
・2月9日、一回目の退舎式リハーサル。アグネス舎生全員に禁足令。
・卒業式前日に五回目の退舎式リハーサル。

桂木しのぶ(かつらぎしのぶ):徳心高等科四年。四年三組。アグネス舎339号室。1月8日生まれ。山羊座。O型がかったB型。舎長の歌子姫に頼まれて編入生朝衣と同室になる。徳心学園全体の慣習として、夢見や三矢に三年時の参考書や問題集を譲り、虹子や白路から四年時の古文や地理の参考書を譲り受ける。折り合いの悪いルームメイト朝衣に対して腹に据えかねた時には祈りの手引書の『友のために祈る』の章を暗誦。百合の根が嫌い。理想はレット・バトラーのように情熱的な人がブランデンブルク協奏曲をしょって劇的に登場してくれること。夏休み前に北海大学オケ部の見学に行った際に理想の具現である里崎にのぼせ、光太郎との仲がこじれる。仲直りしかけたところで高城さんの恋人騒動に巻き込まれてまたこじれる。三巻の要請で臨時高等科文化祭実行委員会に四年三組の文化委員代理として潜入。三巻の反成田派の陰謀に巻き込まれ、光太郎との仲直りの機会であった北海大学オケ部の定演をドタキャンすることになり、さらに決定的にこじれる。そのことを心底怒り後悔し、クリスマスバザーの出品物制作には一切協力しないと三巻達に宣言。三巻達からの嫌味に動じず無視し続けたところ、生徒の義務としてバザー当日の食品の売り子を命じられ、宮脇さんの手製パイを12時~16時まで担当することになる。いつもの光太郎の偽名から届いたバザーと同日の大学のコンサートチケットを手に、誰にも相談せずに午後二時にバザーを抜け出し、待ち合わせ場所に走る。手違いはあったものの無事仲直りを果たす。光太郎との仲違いに懲りたこともあり、次期生徒会選挙には出馬しないことを宣言するが、しーのの生徒会入りを諦められない三巻の企みにより成田会長に目をつけられ、光太郎に招かれたホームパーティーに向かう途中で光太郎に抱きとめられた場面の写真を月曜日に各学年の掲示板に貼り出される。成田会長によるしーの書記立候補及び三巻率いる新生徒会への打撃とするための成田会長の策謀と知って怒り狂い、公示期限ぎりぎりに書記立候補を宣言し見事当選。卒業式前日の三回目の卒業式予行演習と五回目の退舎式リハーサルを終えた午後9時過ぎにホームパーティー後初めて光太郎に連絡。次期生徒会書記に決まったことの理解を得る。姉の利恵子は熊大の医学部に進学。

紺野蒔子(こんのまきこ):徳心高等科四年。アグネス舎416号室。旭川青葉中学出身。去年の中劇から通称「嘆きのラインハルト」と呼ばれ、三巻や衿子、有間皇子を押さえて下級生人気のトップを誇る。じゃんけん5回勝負で菊花のルームメイトの座をしーのと争わんとするところに歌子姫からの申し入れがあり、戦わずして菊花と同室になる。アグネス入舎以来三週間毎日、野薔薇茶会、薄荷茶会、マテ茶会、白茶会などの茶会を自慢の茶器とお気に入りの茶葉で開き、清らなる椿姫こと加藤白路さんやきらめく虹子女史、有間皇子などアグネスの有名人のほとんどを招待。歌子姫を招いての茶会「深川で味わうジャクソンの夜」では、朝衣の非常ベル騒ぎで去年の文化祭で夢見に割られて以降お小遣いを貯めに貯めて補充し直した深川の茶器が再び割れて涙に暮れた。6月の土曜日の午後、お気に入りのインド更紗のワンピースを着てシャイン紫のリップをつけ、ウェッジウッドの茶器とカルメル修道会製のバタークッキーを美しく盛り、秘蔵の薔薇水の緑の小瓶(薔薇を煮詰めたエッセンスで17cc2700円)を景気よく振る舞い、西藤さんに告白するための紀伊国屋製特注レターセット(便箋は薄いブルー、白い横罫、右下に鮮やかなコバルトブルーでmackeyのネーム入り)を披露。アルファ・サッポロのティーラウンジで彼女連れの西藤さんに遭遇し失恋。その後ねちねちといじける。クリスマスバザーには花びらクッション12個とポプリを出品。バザー当日は12時から高等科模擬店のウェイトレスを担当。

佐倉菊花(さくらきっか):徳心高等科四年。アグネス舎416号室。四年一組。成績は50番前後。11月15日(土)発売の増刊号『ビバ・プリンセス』に作品が掲載。一躍徳心スターの一人となる。札幌市内の漫研『エトセトラ』からのカット画の依頼や別の漫研『ゼロへの招待』から入会の招待、光ヶ丘学園高校の漫画同好会から集会のゲストに来てほしいと申し入れが来る。寄宿のシスターの知るところとなり、11月末の生活書の備考欄に雑誌への作品掲載と身辺のざわつきについて明記され、実家の父親から即呼び出しを受ける。帰宅して切り出したところで、最古参の職人の十郎おじいの危篤の知らせが入り、病院に駆け付けたところ翌朝には持ち直して病床で菊花の功績を讃えたため、父親は菊花の漫画を許可。クリスマスバザーには額入りサイン付きカラーイラスト8枚を出品。バザー当日は12時から高等科模擬店のウェイトレスを担当。

及川朝衣(おいかわあさい):徳心高等科四年。高等科からの編入生。四年三組。旭川東中学出身。アグネス舎339号室。しーのと同室。各組の委員長6人を足して6で割ったような人。きっちり編み込んだひっつめ髪にメタルフレームの眼鏡をかけた、なかなかの美人。中二の時に受けた中三が主体の高校受験用のO社全国一斉模試で全国ベスト50に入った。地元の旭川では市長より有名(マッキー談)。水泳以外はスポーツ万能。500点満点の編入試験を499点で合格。ヴァイオリンが好きで、クライスラー、メンデルスゾーンが好み。好きなヴァイオリニストはフランチェスカッティ。ハイフェッツは別格。当初からとっつきにくい態度でクラスメイトから反感を買っていたが、編入生のための歓迎ピクニックをエスケープしてポールタウンで姉とウィンドーショッピングを楽しんでいるところをピクニック帰りのクラスメイトに目撃されて一気に孤立する。さらにクララの新三年生の入舎テストの現場に鉢合わせし、舎内の暗黙のルールを知らなかったために非常ベルを鳴らしてしまう。入舎テストを中断させた上に馬鹿にする発言をしたことで寄宿舎生からの反感も強まる。姉雪衣の恋人である前田に片想い中で、前田と同じ北海道大学志望。お肉の脂身が嫌い。次期高等科生徒会議長。

園田三巻(そのだみまき):徳心高等科四年。クラス委員長。高等科文化祭実行委員会での成田会長の横暴に反旗を翻し、高等科の催し物を全てボイコットすることを宣言。支持者達とともに中等科優位のために奔走する。次期高等科生徒会会長。
有馬美貴子(ありまみきこ):徳心高等科四年。通称「有間皇子」。アグネス舎生。クラス委員長。三巻に賛同して文化祭の高等科の催し物をボイコット。シスター・チェリーナと現アグネス舎長歌子姫から次期アグネス舎長に指名される。
衿子(えりこ):徳心高等科四年。クラス委員長。三巻に賛同して文化祭の高等科の催し物をボイコット。次期高等科生徒会副会長。
万里(まり):徳心高等科四年。四年三組。しーのとは中等科からのクラスメイト。
江っちゃん(えっちゃん):徳心高等科四年。四年三組。しーのとは中等科からのクラスメイト。四年生の掲示板に貼り出されていたしーのと光太郎の写真を発見して剥がし、登校してきた三巻に報告。
久美(くみ):徳心高等科四年。四年三組。編入生朝衣の三組入り情報を職員室前廊下をうろついて入手。
加山(かやま):徳心高等科四年。四年三組。クラス委員長。数学や生物が得意。
スミちゃん:徳心高等科四年。四年三組。歓迎ピクニックをエスケープした朝衣が姉とポールタウンで買い物を楽しんでいるところを目撃。怒り狂ってクラス中に言いふらす。
モリ:徳心高等科四年。アグネス舎生。朝衣の非常ベル騒ぎの全貌を各部屋に報告して回った。次期高等科生徒会会計。
宮脇(みやわき)さん:徳心高等科四年。クリスマスバザーに手製のパイ12個を出品。
西ちゃん(にしちゃん):徳心高等科四年。クリスマスバザーに籐細工を出品。
おスガ:徳心高等科四年。クリスマスバザーに総ビーズの壁掛けを出品。
黒ちゃん(くろちゃん):徳心高等科四年。四年三組。クリスマズバザーのパイの売り子を午後二時からしーのの代役で務める。
ユミ:徳心高等科四年。六年生の掲示板に貼り出されていたしーのと光太郎の写真を剥がしてきてくれた。
原ちゃん(はらちゃん):徳心高等科四年。次期高等科生徒会副議長。

池上歌子(いけがみうたこ):徳心高等科五年。通称「哀しみの歌子姫」。アグネス舎長。かよわく儚げで、一見行動力も統率力も無さそうだが、哀しく切なそうな眼で祈るように見つめられると反論するのが極悪人のような気になるため、なまじの統率力より威力がある。丸井さんの親友。
鷹巣玲子(たかすれいこ):徳心高等科五年。通称「ドミナ玲子」。学生馬術北海道大会で高校生ながら二位の実績を持つ学生ライダー。芸術的な鞭捌きに定評がある。奇跡の高城さんの大奥総取締役四代目。自身も徳心スターの一人。
桃井(ももい)さん:徳心高等科五年。アグネス舎生。大奥の御年寄格。ドミナ玲子の代理でしーのに大奥からの招待状を届ける。
奥野(おくの)さん:徳心高等科五年。高等科文化祭実行委員長。
丸井(まるい)さん:徳心高等科五年。高等科の実力者。三巻に賛同して文化祭の高等科の催し物をボイコット。歌子姫の親友。
布引(ぬのびき)さん:徳心高等科五年。通称「マリンブルーのアタッカー」。バレー部主将。伸びやかな肢体を目の覚めるようなマリンブルーのユニフォームで包み、華麗な時間差攻撃を決めるエースアタッカー。高体連北海道地区準優勝。高等科の保体委員長兼春季体育大会実行委員長だったが、成田会長の横暴に耐えかねて任期途中で辞任。三巻に賛同して文化祭の高等科の催し物をボイコット。
俵坂(たわらざか)さん:徳心高等科五年。高等科学習委員長。三巻に賛同して文化祭の高等科の催し物をボイコット。きらめく虹子女史の後を受け継ぐ正統派硬派。
樹原(きはら)さん:徳心高等科五年。実家は呉服屋。クリスマスバザーに一反80万の練り絹の端切れで作った座布団カバー3枚組10セットを出品。金糸銀糸で玉手箱を浮かし刺繍した生地に四方に組紐様の房がついているという目撃情報でマッキーの闘志に火を点ける。

相沢虹子(あいざわにじこ):徳心高等科六年。通称「きらめく虹子女史」。アグネス舎生。中等科時代に二年間生徒会活動(三年時は生徒会長)をしていたため、高等科でも役職に就くと独裁政権のようになるという見地から表舞台からは身を引く。他の実力者達もそれに倣ったため高等科生徒会は人材不足となり、生徒会経験のない成田志津子が虹子の強力な後押しで会長に就任したものの、成田本人には実力がないため陰で支え協力。他の役員達も虹子を頼りに動いていたため、陰の生徒会長と呼ばれた。六年生になってからは完全に引退。札幌医大を受験予定。
加藤白路(かとうしろじ):徳心高等科六年。通称「清らなる椿姫」。アグネス舎生。東京女子大を受験予定。
高城濃子(たかぎのうこ):徳心高等科六年。通称「奇跡の高城さん」。西区在住。夏休みの予備校で出会った御影彰一につきまとわれる。多摩美のデザイン科を受験予定。
成田志津子(なりたしづこ):徳心高等科六年。二期連続の高等科生徒会長。一期目に虹子が陰の生徒会長として君臨していたことを逆恨みし、虹子の引退後に最高学年の強みをもって敵なしの状態で二期目の会長に就任。体育大会で高等科にのみテニス競技を独断で導入したり、文化祭での教室及び講堂使用権を最高学年で会長という権力を振りかざして高等科に圧倒的有利に獲得させるなど、折々に中等科を弾圧。昨年度中等科生徒会長として功績を上げた実力者三巻及び新四年生を敵視している。
笠井(かさい)さん:徳心高等科六年。奇跡の高城さんの大奥総取締役三代目。去年の文化祭で自分のクラブの催しに駆けずり回り、古文研有志演劇での高城さんとしーののラブシーンを阻止できなかった責任を問われ、ドミナ玲子の暗躍により大奥から永久追放された。

鈴木夢見(すずきゆめみ):徳心中等科三年。中等科生徒会副会長。クララ副舎長。入舎テスト中断事件について、クララ舎長青柳さんらとともに朝衣に直談判に来る。成田会長に弾圧される中等科生徒会の一人として仕事に追われストレスが溜まっており、しーのが光太郎のことで相談しようとすると真っ赤な顔で怒る。怖い。
角田律子(つのだりつこ):徳心中等科三年。中等科生徒会長。割と可愛い。
加納三矢(かのうみや):徳心中等科三年。クララ舎生。夢見の腹心の友。文化祭での『中劇出演者を囲む会』に一般来客を呼び込むため、一般来客用の中央玄関で衆人環視の中マッキーと一芝居打つ。
青柳(あおやぎ)さん:徳心中等科三年。クララ舎長。朝衣がクララの入舎テストを中断させた件で、副舎長の夢見他計4人で339号室に直談判に来て正式な謝罪を求める。不遜な態度を崩さない朝衣に腹を立てるが、なんとか取り成そうとするしーのの顔を立て、穏便に事態を収拾する案を出して引き下がる。
良子(よしこ):徳心中等科三年。クララ舎生。西藤さんの教え子。
豊ちゃん(とよちゃん):徳心中等科三年。二期連続中等科生徒会会計。

千場ちゃん(ちばちゃん):中等科生徒会議長。
小浜(こはま)さん:徳心中等科二年。3歳の時からヴァイオリンを習っており、文化祭の中等科演劇『果樹園のセレナーデ』主役キルメニイ役。

シスター・アンジェラ:アグネス舎のハウスマザー。
シスター・チェリーナ:クララ舎のハウスマザー。
シスター・アンズヴェリス:好きな音楽はブランデンブルク。
シスター・マリア:生徒指導係。御年五十余歳の穏やかな方。

寿家光太郎(すけこうたろう):北海学院大学法学部二年。サイクリング部。平岸在住。一人息子。
西藤進(さいとうすすむ):教育大の中学課程二年。クララ三年生の家庭教師。高校の後輩で大学受験を控えた高三の女性と二年前から付き合っている。
及川雪衣(おいかわゆきい):札幌女学院大学一年。朝衣の姉。おっちょこちょい。
前田英比古(まえだひでひこ):北海道大学一年。オーケストラ部。北海大学オケ部の10月の定期演奏会に向けての助っ人。ヴァイオリン担当。雪衣の恋人。
里崎晋(さとざきすすむ):北海道大学医学部三年。北海大学オケ部の10月の定期演奏会に向けての助っ人として指揮を担当。元は芸大志望だったが親が医者のため泣く泣く医学部に進学。高校時代にNコンのヴァイオリン部門で全国二位。北海道大学オケ部ではコンマス。ブランデンブルクの6番をしょって現れた。一つ年上の文学部の才媛と交際中。
大川(おおかわ):北海学院大学二年。オーケストラ部。光太郎の友人。
佳子女史(よしこじょし):北海学院大学法学部二年。法学部一、二の美人。身長約163-4センチ。光太郎にべったり。
紺野蒔絵(こんのまきえ):マッキーの妹。青葉中学三年。姉と違い、人並みの神経と羞恥心の持ち主ゆえ苦労が絶えない。
御幸彰一(みゆきしょういち):北斗学園三年。身長180センチ超の美男子。夏休みの予備校で奇跡の高城さんに一目惚れし、執拗につきまとう。
金井やよい(かないやよい):北海学院大学教育学部二年。サイクリング部。帯広出身。高校時代に女子校の寮生活を経験していたことから、光太郎のしーの宛ての手紙の宛名と差出人を代筆してくれる。光太郎に誘われて徳心の文化祭に来る。淡いピンクのワンピース。

しーのや朝衣たち四年三組の編入生歓迎ピクニックの行先の中島公園はこちら。
http://www.sapporo-park.or.jp/nakajima/
水琴窟やレナード・バーンスタイン像などがある。なぜバーンスタイン…?「バーンスタイン 札幌」で検索してみたところ、毎年7月に札幌で開かれるパシフィック・ミュージック・フェスティバルというバーンスタインが発起人となった音楽祭があるらしい。これに関連しての像なのかな。

「まあまあ、元気出して。コーヒーゼリー、食べる?」
「食べる!」
 光太郎の最大の長所は、気前の良さだ。
 あたしはうきうきして、光太郎の後について行った。
 光太郎は大同ビルを上がって、大同画廊の横にある喫茶室に入った。
 画廊で絵を見た帰りに立ち寄るような、静かな、おとなしい店である。
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『アグネス白書』 第二章 とびきりのお茶会へようこそ P77 


朝衣と冷戦状態の寄宿に門限ぎりぎりまで帰りたくないしーのにコーヒーゼリーをおごってくれる光太郎。いいやつ。コーヒーゼリー食べたい。

大同ギャラリー
http://www.daido-gallery.jp/
ギャラリー横の喫茶店の在る無しはわからないけれど、残念ながらこのギャラリーは2016年3月29日に閉館してしまうらしい。そして大同生命ビル自体の公式サイトはないようなので、代わりにビル図鑑なるサイトの大同ビルのページを。
https://b-zukan.jp/floor/sapporo/77/

 その夜、朝衣は、千秋庵のノースマンの箱を、あたしの机の上に突き出しながら、言った。
 あたしは、むっとした。
「いただけないわよ。お姉さんのお気持ちは嬉しいけど、あなたの世話はこれっぽっちもしてないからね、させてくれないし」
「いいから、もらっとけば?これが、いわゆる女子校育ちの流儀ってやつなんでしょ。いつだったか、クッキーもらってたじゃない。姉さんも、高校時代によくやってたわよ」
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『アグネス白書』 第二章 とびきりのお茶会へようこそ P83-84


雪衣ちゃんからしーのへのおみやげ、千秋庵(せんしゅうあん)のノースマン。
http://senshuan.co.jp/recommend/2034.html
>昭和49年に発売されたノースマンはグルメの大地、北海道を代表する銘菓です。
>北海道産の小豆を使用したこし餡をパイで包み、甘さをおさえ、しっとりとした口あたりに仕上げました。
こしあんのパイ!おいしそう。

 朝衣は不思議そうに、しきりと、そんなものかしらを連発した。
 勉強ができるばかりで、世間知らずなんだよな、結局。
 そんな具合に、あたしと朝衣は、「そんなものかしら」「そんなものよ」のやりとりをしながら、仲良く、三越劇場に向かった。
 大通りの近くにあるホテル・アルファサッポロの地下の、小さなシアターである。
 一回目の上映時間は、十時半だった。
 あたし達は九時四十五分には、三越劇場に着き、狭いロビーの椅子に腰かけて、持っていた本で顔を隠しながら、出入り口を見張った。
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『アグネス白書』 第二章 とびきりのお茶会へようこそ P109


三越劇場もホテルアルファサッポロも今はなくなってしまったそう。

映画館グラフィティー【映画館グラフィティー】 三越名画劇場(札幌市)
http://www.asahi.com/area/hokkaido/articles/MTW20131108011170001.html
>座席こそ60余りだが、大理石を使ったトイレやスマートなテケツ(受け付け)、女性スタッフがいつも笑顔でお迎えという、ゴージャスな雰囲気が話題を呼んだ。
>目も覚めるような深紅のソファは、当時は珍しいリクライニングシートで、どこまでも深く倒れることに驚かされたもの。
>中央区南1西5、ホテル・アルファサッポロ地下1階/1980(昭和55)年開業、2003年閉館/座席数・63(開館時)

当時は開業したばかりで札幌の若者達のおしゃれな場所だったんだろうなぁ。

ホテルアルファサッポロは現在のホテルオークラ札幌とのこと。マッキーが彼女連れの西藤さんに遭遇してしまったホテルアルファサッポロのティールームのオリジナルシャーベット「トロピカル・パッション」ももう確認不可能なので、参考用に現ホテルオークラ札幌のティーラウンジを。
Hotel Okura Lounge Precious
http://www.sapporo-hotelokura.co.jp/restaurant/precious/
…女子校生が一人制服でシャーベットを食べるところじゃなさそう。

西藤さんの彼女が見たがったというリバイバル上映の映画「うたかたの恋」は、1936年版と1968年版とあるんだけどさすがにやっぱり1968年版かな。
http://www.allmovie.com/movie/v101928
原題は「Mayerling」、ヒロインはカトリーヌ・ドヌーブ。

「相変わらずだよ、しーのは。喜んでいいのか、がっかりするべきなのか」
「喜んでいいのよ。それより、円山公園に行かない?帰りに『モンドール』に寄って……」
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『アグネス白書』 第四章 高城さんの恋人 P247-248


「モンドール 円山」で検索してみたところ、それらしいケーキ屋さんが。
http://tabelog.com/hokkaido/A0101/A010105/1002143/
パールモンドール南6条店。作中ではケーキ屋さんとは言ってないんだけど、しーのといえば食べ物だし、昔からある老舗のケーキ屋さんぽいし、ここのことかな?

 マッキーは、あたし達の不安など意に介さず、意気込んでぶち上げた。
「ともかく、今日はあたしの前祝いよ。楽しく、かつ優雅に、二杯目のお茶をいただきましょう。恋が成就したあかつきには、優雅なお茶会を開いて、あたしの明るい未来を祝おうね。お茶はもちろん、ビンテージダージリン、お茶受けはマロングラッセと、金作屋の塩釜よ。花は、その頃、学園の中庭に咲いているやつをあらいざらい、かっさらっちまおう。あんた達、とっておきの洋服を着るのよ。あたしは、白いシルクジョーゼットのバスク風ローウェストのワンピースを着るわ。そして、レディ・ミツコを惜しみなく、ぶっかけるのよ。うわー、思っただけで息がつまりそうに、美しいお茶会になりそうだわ」
 菊花がぎょっとして息をのみ、マッキーに聞こえないように囁いた。
「あたしのとっておきの服って、カシミアのツーピースなのよ。これから本格的な夏だって時に、カシミアのツーピースを着ろってのかしら」
「あたしだって、同じようなもんよ。シベールのグレイのジャンパースカートが、とっときのやつだけど、あれ、100%ウールなのよ。それにあたし、レディ・ミツコって嫌いよ。あのねちっこい匂いを嗅ぐと、頭がガンガンしてくるの」
 あたしと菊花は、マッキーの恋の成就を心から祈りつつ、そうなったあかつきの悲惨なお茶会の様を思い浮かべ、そっと吐息した。
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『アグネス白書』 第二章 とびきりのお茶会へようこそ P72-73


「レディ・ミツコ」はゲランの香水ミツコ。
MITSOUKO
http://www.guerlain.com/jp/ja/fragrance/womens-fragrances/mitsouko
>1919年、ヨーロッパが日本ブームの真っ只中にあり、極東の文化が人々を魅了していた時代。ジャック・ゲランは新しく創作した香りを「ミツコ」と名付けました。それは小説『ラ・バタイユ』のヒロインの名。慎ましやかでありながら、強い意志を秘めた女性をイメージした香りです。
スペルは MITSUKO じゃないんだね。

「シベール」は何だろう。洋服のブランドかなと思ったけど今検索してみてもそれらしいのが出てこない。シベール"Cybele"そのものの意味は、ギリシャ神話の大地の女神の名前で、ジュピターやネプチューンの母とのこと。

「金作屋の塩釜」はの金作屋はおそらくこの金作屋なのかな。
http://tabelog.com/hokkaido/A0107/A010708/1024509/
北海道岩見沢市にある和菓子屋さん。
「塩釜」というのはこのお店の和菓子の名前か何かかと思ったら一般名詞だった。
https://kotobank.jp/word/%E5%A1%A9%E9%87%9C-72234
>塩釜
>干菓子の一種。もち米を主にした落雁風の棹菓子。
とのこと。もち米を主にした落雁風の棹もの…食べたことある気がする。たぶん好きな記憶がある、と思う。しかしこれが女子校生の美しいお茶会のお菓子になるところが時代っぽい。そういうところが好きだ。ちなみに「塩釜」は氷室さんの別作品『恋する女たち』にも主人公多佳子の茶道部で出る普段のお茶菓子として出てきます。きっと氷室さんが好きなんだな。

 翌々日の日曜日、マッキー主催による『痛ましき恋の終焉を哀惜するジャスミンとウェッジウッドのお茶会』が開かれた。
 当然のごとく、あたしはウール100%のシベールのジャンパースカートを着こんだ。
 朝衣の一番上等の服というのが、幸運なことに、バーゲンで買ってもらったというマダム花井の、七万円ちょっとしたというキャミソールドレスだった。
 菊花は決死の覚悟で、サテンの白いブラウスに、カシミアのツーピースをちゃんと着た。
 あたし達は四一六号室に集い、言葉少なに、行儀よく、熱いジャスミン茶をすすった。
「結局のところ、美しく装い、美しい器で、香りの高い、一杯の熱いお茶を飲めば、癒されない傷はないのだわ」
 美しく装った美少女(?)四人が群れ集っての、理想通りの優雅なお茶会に、失恋の傷も多少は慰められたのか、シルクジョーゼットの涼し気なノースリーブワンピースを着たマッキーは、静かに、自分自身に言いきかせるように呟いた。
 確かに、その通りだ。
 このお茶会が、少しでもマッキーの心を癒してくれれば、こんな嬉しいことはない、とあたしはマッキーのために心から祈りつつ、しとど流れ落ちる汗をハンカチで拭った。
 七月二日、今年初めて三十度を超えた真夏日、日中最高気温三十・五度の午後二時半のことだった……。
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『アグネス白書』 第二章 とびきりのお茶会へようこそ P129-130


朝衣のキャミソールドレスの「マダム花井」はYukiko Hanaiなのね。
https://www.hanai.co.jp/index.html
http://www.yukikohanai.jp/

ここで月日と曜日が出てきたので、カレンダーと照らし合わせてみた。
この『アグネス白書』が出版されたのが1981年なので、当然この7月2日の日曜日は1981年かと思ったら1981年の7月2日は木曜日。調べたところ直近で7月2日が日曜日なのは1978年。この月日設定には何か意味があるのか全く適当だったのか…ちなみにこれが1978年のできごとだとすると、前述の通り1980年開業のアルファ・サッポロも三越劇場もその頃まだない。
1981年カレンダー1978年カレンダー

「デート……って、もしかして、あの……」
「そう。あたしの誕生日のプレゼントを買う約束をしてたなんて、まっ赤もまっ赤、真紅の嘘だわよ。この連中が、あたしの誕生日にプレゼントを買うような、ヤワな人間に見える?御幸クンが、濃子に女の恋人がいると知ってかなりショックを受けつつも、女なんかに負けるはずがないと、半ば意地で映画に誘ってくるから、濃子にあっさりOKさせたの。それが例の、八月二十三日の日曜日ね」
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『アグネス白書』 第四章 高城さんの恋人 P256-257


輝かしき先輩方のしーのを巻き込んでの悪巧みでしーのが奇跡の高城さんとお出かけしたのは8月23日の日曜日。これは1981年のカレンダー通り。

『アグネス白書 ぱーとⅡ』の第一章往復書簡(マッキーとしーの菊花朝衣の手紙だけで構成)は引用のしどころに迷うので、まとめて月日を確認してみると…

・土曜の午後1時、くるみやのパーラーでしーのと光太郎が待ち合わせ。マッキー里帰り。
・日曜、清酒男道酒造株式会社創立80周年記念パーティー。帰舎しないマッキーに深夜しーの菊花朝衣の三人で手紙を書く。
・月曜、合作の手紙を朝一番の速達で出す。早朝、マッキー盲腸の手術。しーの菊花朝衣再び手紙を書く。9月22日。
・火曜、雪衣の誕生日。
・金曜、9月26日。

月曜日に三人が書いた手紙の日付が9月22日で、マッキーが病院から「今から速達で出せば土曜の夜には届く」と書いた手紙の日付が9月26日。1981年の9月22日は火曜日なので、上で合ってたカレンダーがまたここで一日ずれるという。

ちなみにマッキーの実家、男道酒造創立80周年記念パーティーに使われたのがこちら。
旭川グランドホテル
http://www.asahikawa-grand.com/
エメラルドホール、ダイヤモンドホールという名前の会場はないみたい。

マッキーが今度からレディ・ミツコはやめてこれを使うと宣言したのがジャン・ダルブレのカザック。
Jean d'Albret Casaque
http://www.profice.jp/brand/j/jean-d-albret/casaque.html
>1957年発売。カザックとは騎手の着る袖の広いマントのようなジャケットのことで、1960、70年代にヒットした香りです。

『アグネス白書』での徳心学園文化祭は10月24日から26日の三日間。
最終日の10月26日は日曜日となってるけど、1981年のカレンダーでは10月26日は月曜日で、直近で10月26日が日曜日なのは1980年でした。→1980年カレンダー

光太郎がしーのにチケットを送ってきた文化祭の中日と同日のコンサートがこちら。

・北海学院大学オーケストラ部第十二回定期演奏会
・指揮:里崎晋<北大オーケストラ部所属>
・10月25日(土)道新ホールにて午後三時から。


道新ホール
http://www.doshin-acty.co.jp/doshin/
ここで一人で聴いたのか光太郎…(゚ーÅ)

大通り公園
http://www.sapporo-park.or.jp/odori/
光太郎が待ち合わせに指定した公園。広い。ここで一人で…。

12月24日のクリスマスバザーと同日のコンサートがこちら。

・札幌女学院大学マグノリアコール、北海学院大学オーケストラ部特別ジョイントコンサート
・『イブに第九を』
・12月24日共済ホールにて午後三時から
・共済ビルの5階が共済ホール。エレベーターあり。


札幌 共済ホール
http://www.kyosaihall.jp/index.html
作中ではホールはビルの5階だけど、公式サイトでは6階。しーのと光太郎の和解の場となった1階ロビー(とソファ)が見てみたかったけど写真はなくて残念。ロビーには自動販売機はあったのかしら、紙コップ入りのミルクコーヒーはあったのかしら、ミルクティーもあったのかしら。

 一月十九日の三学期始業日を明日に控え、クララにもアグネスにも、ぞくぞく舎生が帰って来た。
 廊下ですれ違い、挨拶をする顔ぶれは懐かしく、いつもと違わないのに、何かが違っていた。
 帰って来た朝衣に飛びつき、宿題を写させてもらってる時も、菊花に頼んでおいた美術の提出課題の雪景色スケッチ画を、六花亭のホワイトチョコレートと交換してる時も、マッキーに頼んであった家庭科の自由課題の棒編みショールと、千秋庵の『月の石』と交換してる時も、「何かが違ってる」という感覚は抜けなかった。
 その理由がわかったのは、夕食後、哀しみの歌子姫と有間皇子が沈鬱な表情で、部屋に訪れた時だった。
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『アグネス白書 ぱーとⅡ』 第四章 しーのはしーの P178


六花亭 ホワイトチョコレート
https://www.rokkatei-eshop.com/eshop/commodity/00000000/10599/
千秋庵 月の石
https://senshuan.co.jp/shop/products/detail.php?product_id=44
画像をクリックすると断面のアップ画像が。めっちゃおいしそう。

しーのが光太郎の家のホームパーティーに招かれた日の流れは大体こんな感じ。

・午前11時に寄宿を出て、光太郎と待ち合わせている大通りの三越地下出入口に向かう。
・三越の地下一階でおみやげを買っていたところで成田会長他二人と遭遇。
・車で光太郎の自宅へ。光太郎のお母さんは二条市場の魚清にいいエビと鮭を買いに行ったまままだ戻らない。
・午後一時半を過ぎてようやくお母さんが帰宅。
・光太郎はミツカン酢とじゃがいも一袋とオレンジ三個を買いに行かされ、その間にしーのは野菜を洗ったり切ったりする手伝いを申し出る。
・午後2時前後から焼肉パーティー。
・午後5時少し前に散会。光太郎の車でしーのと夢見は寄宿へ帰舎。
・翌朝、各学年の掲示板全てに、三越の地下パーキングで転びそうなしーのを光太郎が支えた瞬間の写真が貼り出される。

ホームパーティーの翌日が月曜日となっているので、始業式から日付と曜日を逆算してみると、

1月18日(日) しーの、延岡の実家から寄宿舎に帰る
1月19日(月) 三学期始業式、生徒会選挙受付開始、光太郎と電話、自宅に招待される
1月23日(金) 光太郎の両親の結婚記念日
1月25日(日) 光太郎の家でホームパーティー
1月26日(月) 午後5時で生徒会選挙受付締切


この日付と曜日に合致するのは1981年のカレンダーでした。これはすっきり!

 あたしは唇を噛みしめて、その後ろ姿を睨みつけ、きっと三巻を振り返った。
「三巻!生徒会役員の受け付け公示期間は、いつまでなの!?」
「今日の五時までよ」
 あたしはあわてて時計を見た。
 四時三十九分である。
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 三巻と有間皇子に片手を引かれ、残る片手でマッキー達に手を振りつつ、あたしは選挙管理委員会本部のある生徒会室に駆けつけた。
 興奮しているため手が震えて、何度も書き損じ、必要事項をすべて書いて書類を提出したのは、四時五十三分のことだった……。

 続く十四日間に渡る選挙運動期間は、無我夢中だった。
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 選挙が終わり、結果が公表されたのは、冬休みが明けて十八日目のことだった。
 その翌々日、高等科生徒会室で、引き継ぎ会兼初顔合わせが行われた。
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『アグネス白書 ぱーとⅡ』 第四章 しーのはしーの P221,222,223


「選挙の結果が公表されたのが冬休みが明けて18日後」なら、1月19日の18日後は2月6日の金曜日。
「受付期限の1月26日から14日間が選挙運動期間」なら、投票と発表は2月9日の月曜日。
2月6日(金)の翌々日の8日(日)が引き継ぎ会兼初顔合わせというのはちょっと違和感なので、2月9日(月)が結果公表、11日(水)が引き継ぎ会兼初顔合わせ、引用してないけどさらに翌々日の朝礼での任命式が13日(金)になるのが自然かな。

…少し細かすぎたかしら。
年号覚えるのは嫌いだけど今日は何の日?みたいに年月日確かめるのが好きなのでついつい。

上記以外で『アグネス白書』に出てきたけど実在を確認できなかったもの一覧。

・夢見と三矢が参考書などのお礼にと、しーのに持ってきた「十勝ワインクッキー」
・マッキーが特注レターセットお披露目の際に饗した「カルメル修道会のバタークッキー」
・夏休みが明けてすぐ、しーのと高城さんが行った「旭屋書店」←北海道から撤退したらしい。
・しーのと高城さんが買い物の後に入った喫茶店「みるくポット」
・マッキーが恋の成就を祝う茶会で饗する予定だった「金作屋の塩釜」
・マッキーが男道創業80周年パーティーを前に使った、ゲランの香水石鹸「フルー・ド・アルプス」

十勝ワインクッキーが食べたすぎる。名前からして絶対実在すると思ってたんだけどな。これは全く架空なのか、かつてはあったものなのか。しーのの「これおいしいのよ」という言葉に今も食欲をそそられ続けています。

長年読んでて今頃気付いたけど、夢見の両親の海外出張が二年ってことは、『クララ白書』『アグネス白書』計4冊分がちょうど二年間だから、この後夢見が高等科に入る頃には帰国してくるってことだよね。普通に考えたら自宅通学圏内だから家に帰りそうなもんだけど、やっぱりしーのがいるからって寄宿舎に残るのかな。

ここまでクララアグネス計4冊分を一気に振り返ったところで、モデル(と思われる)藤女子中高と行事やスケジュールを照らし合わせてみる。

藤女子中学校・高等学校 主な行事
入舎式入舎式後の昼食会(2015年4月7日)
一学期始業式(2013年4月8日)
入学式(2015年4月8日)
新入生と在校生の対面式(2015年4月8日)
高校合唱コンクール(2015年5月9日)
学校祭(7月)
二学期始業式(2013年8月20日)
体育祭(2014年9月4日)
高校球技大会(10月)
中学合唱コンクール(11月)
藤のクリスマス(12月)校内クリスマス(2013年12月20日)
三学期始業式(2014年1月16日)
卒業式(2014年2月1日)、卒業式(2015年2月1日)
中学球技大会(2月)
立会演説会、投票(2015年2月19日)
藤波会(生徒会)選挙(2014年2月20日)
三学期終業式(2014年3月24日)


● 徳心学園中等科・高等科 主な行事
入舎式
一学期始業式
入舎テスト(入舎から2週間が期限)
高等科編入生歓迎行事(始業式から約2週間後)
春の体育大会
立志式
英語暗唱大会
詩の朗読大会
一学期終業式(7月24日)
二学期始業式(8月20日頃)
全校読書感想文コンクール
秋の体育大会
文化祭(10月24日-26日)中劇、高劇、模擬店、催しもの、合唱大会、弁論大会など
クリスマスバザー(12月23日または24日)
二学期終業式(バザーの翌々日)
三学期始業式(1月19日)
生徒会選挙(2月初め)
卒業試験、期末テスト(2月末)
卒業式(2月末~3月初め頃)
退舎式(卒業式と同日)


二学期の始業式が早くて三学期の始業式が遅いのは北国ならでは。
そしてこの記事など見るに、藤女子では高等科を四~六年生と言ったり1~3年生と言ったり、表記が混在してるみたい。内部用と外部用みたいな感じなのかな。あと藤女子にはクリスマス行事はあるけどクリスマスバザーはないというのが結構衝撃だった。卒業式の時期は藤女子と徳心では大きく違うのね。

クララ藤女子 地図

現在の藤女子の寄宿舎は10数年前に建て替えられたらしく、L字型というか鍵字型。建て替えられる前は本当にコの字型だったのかしら。校舎も新しそうで、現在は7階建て。グラウンドはなく、裏庭やテニスコート、体育館がある。体育祭は近くのスポーツ施設「つどーむ」で行うみたい。敷地内にマリア院という建物があって、これが後述の『白い少女たち』に出てくる聖母院のモデルではないかと。藤女子正門前にはマリア院クララ館という新しいアパート風の建物もある。マリア院の別館か何かなのかな。名前が「クララ」なんて、いいなあ。

藤女子寄宿舎 一日のスケジュール
7:00-7:30 朝食
7:30-8:00 登校準備、掃除
下校-17:30 自由時間
17:30-18:00 夕食
18:00-19:00 自由時間
19:00-20:30 黙学
20:30-21:00 自由時間
21:00-22:00 黙学
寄宿舎での生活(Archive)、寄宿舎概要(Archive)


「黙学室」でのお勉強が本当にあるよー!高等科生は黙学室ではなく自室で勉強するというのもクララアグネスと同じ。寄宿舎生の昼食は寄宿からお弁当が届けられるそうで、作中で舎生のしーのが食べてるお弁当がそれだとすれば納得(長年不思議だった)。

徳心学園寄宿舎 一日のスケジュール
06:00 起床、点呼、掃除
16:00 第一門限
17:30 第二門限(生徒会活動や部活動、図書館在館の場合など)
18:00 夕食
19:30 自由室閉鎖
19:30 黙学(20:30に休憩あり)~21:40
22:00 消灯、巡視
23:00 クララ舎延燈消灯
24:00 巡視
01:30 アグネス舎延燈消灯(四、五年生)
02:00 巡視
03:00 アグネス舎延燈消灯(六年生)


作中から書き出したメモを参考に作ってみた。徳心の朝早いな。

「退舎式って、去年、クララでやったやつですか?終業式の日、自由室で、お茶とお菓子を食べながら、やったやつ」
「違うわよ。クララの三年生は、当然アグネスに移るから、あまり大袈裟なものじゃないでしょ。アグネスの六年生は、退舎したら二度と帰って来ないから、かなり荘厳なお式を行うの。もちろん、お茶もお菓子も出ないわ。卒業式が終わったら、アグネスの六年生はその足でアグネスに帰って来て、約二十分に渡って、それまでの自分の個室を掃除するの。もちろん、毎朝、掃除当番の子がお掃除してるけど、退舎生にとっては、様々な思い出のあるお部屋でしょう。掃除しながら、最後の別れを惜しむのね。その後、大食堂で、退舎生からのプレゼント、在舎生からの献花をします。その後、在舎生が廊下の左側に並んで、拍手とともに退舎生を見送るのよ」
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『アグネス白書 ぱーとⅡ』 第四章 しーのはしーの P184-185


『アグネス白書』では六年生の退舎式はそれは盛大に行われることになっていたけど、実際の退舎式(というかお別れ式)は、この寄宿舎の行事によると、しーのがクララの退舎式として語ったものとほぼ相違ないみたい。12月に全員ですきやきパーティーとか明るい。
ところで菊花は中等科三年生(『クララ白書』)の時に当時高等科五年生の向井さんにすごくお世話になってたのに、この退舎式や卒業式のくだりで虹子女史との別れを惜しみながらも向井さんの名前は一度も出さないのが不思議すぎる。氷室さん忘れちゃった…?

藤女子寄宿舎 設備
居室、浴室(各階にシャワーが3つ、ユニットバスが1つ、1人30分)、洗濯室、給湯室、チャペル、茶室、保健室、課外室、ピアノ室、デイルーム、食堂、黙学室、コピー機


徳心学園寄宿舎 設備
居室、浴室、自由室、電話室、黙学室(2階)、大食堂(2階)、乾燥室、洗濯室、アイロン室、シーツ室、家庭教師室(通称「ガラスの部屋」)、相談室、事務室、舎監長室、シスター詰所、シスター専用のトイレ、茶室、保健室


黙学室も、マッキーとしーのが前につんのめりながら小笠原流を練習した茶室も本当にあるー!

あと氷室さんのお友達本『ガールフレンズ』で、講演の仕事で京都の聖母女学院に行ったら母校の雰囲気にそっくりで驚いた、ミッションスクールの女子校はやはり雰囲気が似るのか、といったことがクララアグネスの著作紹介欄で書かれていたので一応メモ。
学校法人聖母女学院
http://www.seibo.ed.jp/
京都聖母学院中学校・高等学校
http://www.seibo.ed.jp/kyoto-hs/
こういうミッションスクールには全く縁がなかったので、ただただキラキラして見えて憧れます。


氷室さんの初めての単行本『白い少女たち』も、女子校が舞台のお話。

・紅華学園は札幌にある私立の中高女子一貫校。
・札幌にあるカトリック系のミッションスクールとして有名。
・校舎は五階建て。三年C組は二階。テニスコートがある。
・夏季休暇は8月18日まで。
・12月にクリスマスバザーがある。
・校舎の続きに聖母院という修道院がある。100名近くのシスターが在籍し、寄宿舎に住む10数名以外がここで寝起きしている。シスター達は中高で教鞭を取ったり、近くの紅華幼稚園で保母として働いている。外部からは簡単には連絡が取れないが、クラス担任などを受け持っているシスターとは比較的自由に連絡が取れる。

・寄宿舎は校舎の裏手にあり、四階建てのマンション風のコの字型の建物。
・出入り口と受付、一階の保健室、アイロン室、浴室等は中高共同だが、居住スペースは西側のフェリス舎が中等科生、東側のコロナ舎が高等科生と分かれている。
・休暇中は閉館。新学期始業三日前の8月15日から帰舎受け入れ開始。
・両面に黒と赤で名前が書かれた名札があり、黒は在舎、赤は外出を示す。
・寄宿舎生は8時一斉登校。
・寄宿の出入り口とは反対方向にある非常口を出ると裏庭があり、裏庭を突っ切ると聖母院と廊下続きの聖堂がある。
・一階から二階へ行く階段の横手に談話室があり、自由に集まって喋ったり、テレビを見たりすることができる。
・上級生と下級生がすれ違う際には、下級生の方から挨拶をする。

宮崎碧(みやざきみどり):紅華学園中等科三年。編入生。営林局に勤める父について各地を転々とし、小学校では四回転校。中学一年の終わりに転校する際に親に初めて反抗。中学二年の冬にまた転勤の話が出たことで、札幌在住の伯母の勧めもあり中高一貫で寄宿舎のある紅華学園の編入試験を受け合格(定員2人、受験者数21人)。三年C組。現在の実家は函館。フェリス舎306号室。8月15日に帰舎。度重なる転校で身に付けた処世術で、誰とでもすぐに打ち解けて仲良くなれるが、自分を特別に必要とし、心を打ち明けられるような親友がいないことに寂しさを感じている。

香月倫子(こうづきともこ):紅華学園中等科三年。通称「倫(とも)さん」。室蘭出身。フェリス舎生。三年C組。入学時から五番以内をキープしている秀才。美人。一目置かれる存在として尊敬を集めているが、親しい友人は作らず、委員長などの役職も辞退し続けている。7月初め、聖堂の祈祷台で声を殺して泣いている千佳と遭遇。夏休み間近の7月中旬、中庭で千佳に詩集を渡す。実家は呉服屋。8月15日に帰舎。千佳の失跡に最初に気付く。

塚田千佳(つかだちか):紅華学園中等科三年。札幌市内に住む自宅通学生。三年C組。おとなしくて目立たない、寡黙な少女。日本人形のような丸顔でかわいい子。幼い頃から琴を習い、着物がよく似合う。倫子への詩集の返却を寄宿舎に言付け、8月12日頃に失跡。行方不明のまま、9月下旬に失跡の理由が判明。

蔀瑞穂(しとみみずほ):紅華学園中等科三年。フェリス副舎長。通称「瑞穂姫」。三年C組の委員長。小樽出身。フェリス舎306号室。副舎長という立場から編入生の碧と同室になる。中等科一の美人。千佳とは幼馴染みで親友。8月15日に帰舎。千佳が自分に何も言わずに姿を消したことに傷付き、日を追うごとに憔悴。裏庭や聖堂のベンチでぼんやりしていることが増える。

樹田徹子(きだてつこ):紅華学園中等科三年。フェリス舎長。通称「ジュダ」または親しみを込めて「鬼の舎長ジュダ」と呼ばれる。8月15日に帰舎。統率力があり、話好きで世話好き。下級生のよき相談相手。舎長専用の個室住まい。
小谷弘子(こたにひろこ):紅華学園中等科三年。フェリス舎生。倫子と同室。苫小牧出身。週末ごとに家に帰る甘えん坊。夏休みに地元でボーイフレンドができたとはしゃぐ。
結城(ゆうき)さん:紅華学園中等科三年。フェリス舎生。千佳についての無責任な噂を瑞穂に話してしまう。
大野由子(おおのゆうこ):紅華学園中等科三年。碧と同じく編入生。三年A組。学園に溶け込めず、元の中学に戻ることを考えている。

シスター・ロザリア:三年C組の担任。聖母院に居住。二度の留学経験と修士資格を持つ才女。30歳前後。日本人離れした面差しでしっとりと美しく、生徒の間で最も人気のあるシスターの一人。
シスター・マリア:三年A組の担任。職員室ではシスター・ロザリアの向かいの席。
シスター・ペトラ:フェリス舎に居住。
シスター・テレジッタ:月曜日に寄宿舎の事務を手伝いに来るシスター。

伊藤柊吾(いとうしゅうご):倫子の義理の従兄。浪人生。滝川在住。義母の過去を知り、昨年11月の初めに寄宿の倫子を訪ねる。以来倫子と秘密を共有する形で時々会ったり、手紙のやりとりを続けている。昨年のクリスマスバザーに来る。夏休みに家族で蘭島に行った時の家族写真を倫子に送る。10月初め、北海道庁舎の斜め向かいの東急ホテルのロビーで倫子と待ち合わせる。
伊藤乃里子(いとうのりこ):柊吾の異母妹。中学一年。
塚田悠介(つかだゆうすけ):千佳の兄。高校一年。おとなしい千佳とは対照的な直情家のスポーツ少年。千佳の失跡について倫子が何か知っていると直感し、登下校時に待ち伏せして倫子につきまとう。その過程で碧と知り合い、明るく元気な碧に惹かれ、交際を始める。
香月久志(こうづきひさし):倫子の長兄。東京の大学の三年生。ワンゲル部で、倫子にりんどうの花を採ってきてくれた。
香月高志(こうづきたかし):倫子の次兄。高三で受験生。

寄宿舎がコの字型だったり一斉登校の時間が8時だったり、聖母院というシスターのための建物があったり、近くに幼稚園があったり、藤女子との共通点はかなり多い紅華学園。

「寺田寅彦って随筆家がね」
「え、え?」
 まるで関係のないことを言われ、碧は面くらった。倫子はかまわず続けた。
「科学者で随筆家よ。その人の書いたものに、こういうのがあるの、友人の手帳を偶然開いたら、りんどうの花がしおりにしてはさんであった、そしてFateという単語がいろいろな書体で書き散らされていた……」
「フェイト……って?」
「調べてみたら、運命、宿命という意味だったわ。悲劇的な結末を暗示することが多いんだって」
 倫子が何を言おうとしているのか、わかるようでわからず、碧は何度かまばたきをした。
「人生という言葉は、私のような子供にはまだ大きすぎてもてあますけど、でも、人は人生に一度や二度、Fateと書き散らさずにはいられないことに出会うものかもしれない、と思うわね」
 碧は驚きを隠しきれずに倫子をみつめた。
 Fateと書き散らさずにはいられないことに出会う。碧は自分のこれまでを顧みた。それほどのことに出会ったことなど、なかったような気がする。
 度重なる転校でうわすべりの友達づきあいしかできなくなり、寂しさを覚えながらも、それは決してFateと書き散らさずにはいられないという切迫したものではなかった。
 倫子はいう、どこでこんなことを考えなければならないほどの傷を受けたのだろう。
「……と言ったら、塚田さんは首の骨がきしむかと思うほど、力を入れてうなずいたわ」
「塚田さんが?」
「涙を落とさないように、目を大きく開けて、まばたき一つしなかった。私はこのしおりを持っていた詩集にはさんで、あの人にあげたわ」
----------
『白い少女たち』 第七章 P118-119


寺田寅彦 花物語
http://www.aozora.gr.jp/cards/000042/files/2331_13487.html
>八 りんどう
>みんな小屋にこもって寝ていた時、藤野の手帳が自分のそばに落ちていたのをなんの気なしに取り上げて開いて見たら、山におびただしいりんどうの花が一つしおりにはさんであって、いろんならく書きがしてあった。 中に銀杏いちょうがえしの女の頭がいくつもあって、それから Fate という字がいろいろの書体でたくさん書き散らしてあった。 仰向きに寝ていた藤野が起き上がってそれを見ると、青い顔をしたが何も言わなかった。

このお話はコメディじゃなくて、静かな静かな命と瑞々しい生のお話。年を取って読むほどにやりきれなくなる。でも最後のロジックに物語の中だけじゃなく自分にも希望を見出すことができる。いや物語の中の希望は、例えば結末の暗示ではないと思うので、そういう希望ではなく、この子達は大丈夫、という漠然とした希望。それは読んでいるこちら側に願いが生まれる瞬間でもある。
主人公の、いろんな意味で健康的な碧に救われたな…。


『誘惑は赤いバラ』は、氷室さんのデビュー作が表題作の単行本『さようならアルルカン』に収録された短編。ミッション系の女子校が舞台で、学校生活の描写自体は少ないんだけど、楽しくて少し切なくて大好きなお話。

・札幌にあるミッション系私立の中高女子一貫校。
:高等科の三学年を四年生、五年生、六年生と呼ぶ。
・年に一度慈善バザーがある
・中等科から高等科までを一年生~六年生と呼ぶ

沼田こゆみ(ぬまたこゆみ):中等科二年。気が強くてお人好し。赤面症に悩んでいるが、そのおかげで秀くんとつきあうことになる。中等科バザー実行委員で売場責任者。
藤房宵子(ふじふさよいこ):中等科二年。こゆみとは赤ちゃんの頃からの幼馴染み。ブラコン。官舎住まい。「お酒を飲みたくない」という誘惑に勝ってお酒を飲み、二日酔いになる。

津島秀雄(つしまひでお):西高一年。剣道部。バザーでこゆみと出会い、つきあいはじめる。
大宮司(おおみやつかさ):教育大付属高の二年。制服は青ブレザー。北海道内多額納税者17位の大宮病院院長の三男。以前から宵子を見初めており、修学旅行で行った京都のお土産(京都友禅の小物袋に愛山堂の香水薫香を入れたもの)と手紙を渡して交際を申し込む。

沼田竜子(ぬまたたつこ):こゆみの姉。共学の進学校の高二。茶道部。
藤房洋介(ふじふさようすけ):宵子の兄。国立大の三年生。ほれぼれするような好青年で、顔も頭も性格もよい。自転車に乗れない。学費は奨学金でまかない、小遣いはアルバイトでまかなうというしっかりした人。恋人と今すぐ結婚したいと言って両親と揉め、家を出て「かつみマンション」の二階左端の部屋で同棲している。
(みのる)さん:洋介の恋人で同棲相手。幼稚園の保母さん一年生。

木村路子(きむらみちこ):高等科五年。ステキできれいで優雅な先輩。
シスター・ガブリエル:細く美しい象牙色の指をしたシスター。
シスター・ロマナ:こゆみと宵子のクラス担任。

 女の子が、ボーイフレンドを家族に紹介するって、秀くんのいうほど簡単なことじゃない。ほかの女の子のことは知らないけれど、私はそうだ。
 母を前に、お友だちよ、秀くんというの、なんて場面を想像しただけで、顔が赤らんでしまう。そう、赤らんでしまうのだ。問題はそこだ。
 ついきのうまで、姉の竜子とお菜の取り合いをやって、とっくみあいの喧嘩をしていたような私が、顔を赤らめて秀くんよ、と口ごもりながらいうなんて、どこか滑稽で、そして恐ろしいじゃないか。
 これまで、家の中をわがもの顔でのし歩き、竜子のばかやろうとか、かあさん、なーによ、このおかず、まずいったら、なんていいたい放題をいっていたし、父や母も私が末っ子でこどもだと思ってるから、それを大目に見ていてくれた。
 それが、秀くんよ、と顔を赤らめていったとたんに、もう金輪際、ばかやろうなんていえない。かあさんたら料理がへたなんだから、というかわりに、私も料理を少し覚えなくちゃ、なんていわなきゃならないような気がする。
 それが怖いのだ。私が私でなくなるような気がする。
----------
『誘惑は赤いバラ』 弱みをにぎられた P180


ここの、こゆみの普段の言葉使いの書き方も大好きなんだけど(つい口に出して読んでしまう)このこゆみの気持ち、すごくわかるし、初めて読んだ時嬉しくて新鮮で感動したんだよね。乗り越えてしまえば簡単かもしれない、あのぐるぐると窒息してしまいそうな気持ち。

そして剣道部の秀くんの試合を一人で見に行くことになったこゆみの試練。
周りが共学の女子高生ばかりで、

「中学生じゃない?」
「一年の津島くんの?まあ」
「よく来るわね。おとなしそうな顔して、強いなあ」
「恋の一念よ。見て、赤くなってる。純情ね」
「ああいう子が来ると、私たち、年寄りに見えちゃうわね」
「かわゆいわねえ。中学生って、あどけなくていいわ。懐かしいわね」
「終わっても、ああやって待ってるなんて、女の子らしいのね」
「じっと耐えるってタイプよ。りっぱ」
「ああでなくちゃいけないのか。私も見ならわなくちゃ」


と、口々に聞こえよがしに囁かれ続けるという苦行の果てに。

 何が耐えるタイプだ。この私が!?冗談じゃない。女の子らしいってだれのことよ、まったく!
 泣くに泣けない気持ちで、うつむいてじっとベンチにすわってると、着替えを終えた秀くんが、けだるそうなようすで近づいてきた。
「いやあ、まいった。つっかれたなあ、どうだ、こゆ、見たかい。おい……どうしたんだ。泣いてんのか!?」
 びっくりしたらしい秀くんの声に、私はびっくりした。
 そういわれて頬に手をやると、なんと、私は泣いているのだ。泣いている、とわかったとたんに、もう涙が止まらなくなって、ひっくひっくとしゃくりあげ出してしまった。
「ど……どうしたんだよ、いったい。どっか痛いのか、おい。医務の先生来てるぞ。診てもらおうか?こゆ、おいったら……」
 秀くんは、おろおろして声をかけてくれたが、こうなったからには止まるまで泣いてやるとばかり、私は泣きつづけた。
 くやしかった。一人で心細かった。女子高生は、本当に大きく見えた。
 私はあんなふうに、エレガントに悪意のある含み言葉をしゃべることなんてできない。
 それがくやしいのではなく、そんな彼女たちにいい返せなかった自分がくやしかった。
 つくづく幼いのだ。かわゆいわね、といわれても仕方がないほど、こどもなのだ。
 それがなんとも情けなくて、私はくやし涙をこぼしてしまったのだった。
----------
『誘惑は赤いバラ』 泣くに泣けない P217-218


宵子とこゆみの、「まだこどもでいたい」「大人になりたくない」という誘惑と、『誘惑』なる『いけないもの』に抗おうとする幼い心。こゆみも宵子も、試練に立ち向かって、かといって一足飛びに成長してしまうわけじゃない。迷ったり失敗したり、踏みとどまったり考え直したり…。それぞれに、心ごと少し脱皮する。いつも通りなのかどうかわからないささやかな足取りで、でも確実に。

上の方で、氷室さんが『アグネス白書』のあとがきに、中学時代じゃなく高校生になって初めて『赤毛のアン』に出会って悔しい思いをしたというエピソードについて書いたけど、私もまさしく高校生になってから氷室さんの作品に出会って、わくわくしながら素直さってこういうこと素直になれない気持ちってこういうこと、と心に落ちて、遅い出会いに悔しい思いをしたので、今でもとても勇気付けられるんだ。

 秀くんが手に、とうきびを持って、駆けてきた。
「ほら、食えよ」
「うん」
 私は秀くんのおごりのとうきびにかじりついた。
 秀くんとよく来る公園。いつも食べるとうきびやアイスクリーム。ちょっぴり、幸福。
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『誘惑は赤いバラ』 バラを二輪 P237


短編なので情報量が少ないんだけど、ラストでこゆみと秀くんがデートしている公園はクララアグネスでも出てきた大通公園なんじゃないかな?と思って調べたところ、とうきびワゴンというのが名物だそう。本当にここかも。
http://www.sta.or.jp/osirase/
>大通公園の名物「とうきび」ワゴンが始まりました!
>焼きとうきび 1本 300円
>ゆでとうきび 1本 300円

氷室さんはこの「とうきび」表記について、全国的流通性を鑑みて「とうもろこし」にするか、香り高きローカル語「とうきび」にするかで一昼夜悩んだという…。「とうきび」って聞くと、なんか普通のとうもろこしよりおいしそうで、特別に香ばしくて甘いのかなぁ…なんて夢が広がるので、「とうきび」でほんとによかったと思う。食べたい。

大宮司が宵子に送った薫香の京都の愛山堂は、たぶんこちら。
豊田愛山堂
http://www.gion.or.jp/gion_shop_detail/豊田愛山堂
http://www.kyoto-wel.com/shop/S81524/
男子高校生が女子中学生へのお土産にするにしては渋いわ。

ラストでこゆみが秀くんに買ってもらって二人で食べたとうきび…じゃなくて薔薇の乙姫。
河本バラ園 おとひめ
http://www.kawamotorosegarden.com/product_k_otohime.html
ひらがなで「おとひめ」なのね。ふわふわした花びらが可憐。

最後に残る疑問を一つ…この「こゆみ」、もしやこの「小優美(こゆみ)」さんではなかろうな?

 ママには薄藤色の綸子がよく似合うけどあれはどうなのかしら。今の季節に合うのかな。確か一昨年、再従姉の小優美さんのお見合いに付き添っていく時誂えたものだから、季節は合うと思うけど。あれに銀糸の入った卵色の名古屋帯がよく映えて、三つ四つは若く見えるもんね。
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『クララ白書』 第五章 その前夜 P233

た、たまたまよね。こゆみは秀くんと上手くいってますように。


私が持っている、参考にした版はこちら。
『白い少女たち』(1978年10月20日初版)は1986年7月25日発行の第21版。
『さようならアルルカン』(1979年12月15日初版)は1989年4月25日発行の第28版。
『クララ白書』(1980年4月15日初版)は1986年7月25日発行の第33版。
『クララ白書 ぱーとⅡ』(1980年12月15日初版)は1986年12月25日発行の第31版。
『アグネス白書』(1981年10月15日初版)は、1987年5月30日発行の第37版。
『アグネス白書 ぱーとⅡ』(1982年10月15日初版)は1984年7月20日発行の第10版。
氷室さんはよく加筆修正されていたらしいんだけど、『クララ白書』と『アグネス白書』の愛蔵版と新装版(クララのみ)については未確認なので、引用した文章やページ数に若干の齟齬があるかも。

今回引用等はしていないけど、クララアグネスの番外編『お姉さまたちの日々』(『月の輝く夜に』収録)も大好き。これはファンの間では昔コバルト本誌に掲載されたっきりもう目にすることは叶わぬのかと諦めかけられてた伝説の番外編(と言いつつ2005年に再掲載されてたとは知らなかった)だったので、『月の輝く夜に』に収録されたと知った時は狂喜乱舞しました。時期的には、しーの達が中等科三年の初夏頃で、入舎テストが終わって夢見が登場したあたりのお話。短編ながら虹子、白路、濃子の魅力と迫力が詰まった念願の一編です。

あと女子校小説ではないんだけど、『さようならアルルカン』収録の『妹』で、現在は共学の高校に通う主人公が中学時代の三年間を寄宿舎で過ごした頃の「寄宿舎の屋根裏部屋(ギャレット)で、父の作品を片はしから読んだ」という回想があります。なんとなく雰囲気的にはカトリック系とかお嬢様学校とかいう雰囲気より海外のギムナジウムっぽい描写なんだけど。そしてこの作品は、寄宿舎云々よりも内容がすごくて、いまだにこれを読むと、読んでる間そして読み終えた後も、怒りと悲しみで涙と嗚咽が止まりません。「読み終えた」って表現も適切じゃないな。文章はそこで終わっても終わらない。取り返しのつかない哀しみと苦しみに慟哭してしまう。なんて話を書くんだ、と二重の意味で毎回思う。主人公になり代わって主人公の父に泣いて抗議して、このラストを違えたいと思ってしまうのよね…。

氷室先生のデビュー作は自身の中学時代をネタにしたという『さようならアルルカン』で第10回小説ジュニア青春小説新人賞で佳作受賞、その応募の際に一緒に投稿したのが小学五年生の女の子が主人公の『少女学講座』、堀辰雄の『麦藁帽子』を少女側の視点で描いた『麦藁帽子異聞』という2作品で、この『麦藁帽子異聞』がご本人的には一番出来がよかったそう。大正時代の男の子と女の子の初恋物語で、女子校育ちの女の子には憧れの上級生がいて…という『クララ白書』大正シリアス版みたいな話だったらしい。堀辰雄の『麦藁帽子』は印象的ではあるけどあまり好きな作品ではないので、これを氷室さんが女子視点でどう描いたのか気になるし、しかも女子校ものだなんて非常に読みたい。氷室さん本人が『氷室冴子読本』編集時に掲載したくて原稿を探したけど見つからなかったとのことで残念。いつか見つかってくれるといいなあ。


今日は『藤花忌』。2008年に亡くなった氷室さんの命日。
これからも何度も読み返すし、何度も続きが読みたくて悶々とするし、くるみやのシフォンを食べるし、いつか札幌に行ってとうきびを食べたいし、藤花忌にもぜひ行ってみたい。

氷室さんと大好きなたくさんの物語に感謝しつつ…おしまい。
関連記事
コメント
懐かしい…!
初めまして。ふと昔好きだった氷室さんの小説について調べていたら、こちらにたどり着きました。
20ウン年前にF女子短大を卒業したオバちゃんです(笑)
東京生活も長くなりましたが、このサイトを眺めていたら青春時代を思い出しました。F女子大のキャンパス、バイトしていた千秋庵、札幌の街並み…全てが懐かしいです。
ちなみに、寄宿舎から通学していた友人は、夜になるとシスターが礼拝のお誘いでドアをノックしに来ると言ってましたっけ。
クララ白書っぽい~と感心したのを覚えています。
25年前にクララの聖地巡礼をしました
こんにちは

私も25年位前、クララ・アグネスの舞台となった地、今でいう聖地巡礼をしたことあります。
「恋する女たち」も聖地巡礼をしました。

もしまだ見ていられましたら、メッセージ下さい。管理人様が、見つけられなかったものや、当時の様子をお知らせしたいと思います。
Re: 懐かしい…!
さーやさま


今頃のお返事になってしまって、申し訳ありません!
またいつかご覧になってくださるといいのですが…

F女子ご出身の方にコメントいただけるなんて嬉しいです。
しかも千秋庵でバイトされていたとは!
氷室さんはほとんどの青春小説を札幌等を舞台に書かれてますから、地元の方には格別ですよね。
寄宿のシスターが礼拝のお誘いに来るなんて、ほんとにクララっぽい笑


つゆこ
Re: 25年前にクララの聖地巡礼をしました
わいわいさま


こんばんは、コメントありがとうございます。
25年前ということは氷室さんがまだコバルトでジャパネスクを書いてらした頃…
まだまだリアルタイム感がある中での探訪ですよね。うらやましいです。
見つけられなかったあれこれや当時の様子、ぜひ教えていただきたいです!
自己満足極まる長すぎる記事でしたが書いておいてよかった…

恋する女たちの聖地についてもぜひ…!
今ちょっと、恋する女たちを読み返してお待ちしております~。


つゆこ

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