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原節子さんのインタビュー 日本評論1950年10月号より

2015.05.02.Sat.14:38
手持ちの古いものの中から。

日本評論 1950年10月号 ≪特集≫映画王國
私の人生劇場 ―映画女優の藝術と生活―
インタビュー 原節子にきく

★容姿と若さで大スターの看板を掲げている女優の中で原節子の場合はとにかく甲羅を経た演技に身体を張っている藝術家としての原節子。熊谷プロダクションの看板女優としての原節子。身内を養う家計の大黒柱原節子。この頃は一献をかたむけつつ浮世のちりを洗うという原節子に拡大鏡をあて、彼女がいかに女優生活をリアルに演じつつあるかに焦点をあわせ、砧の東宝撮影所に「野生」(太泉作品)撮影中の寸刻をとらえる。

バーグマンの魅せられた映画に原節子も魅せられるであろうこと

編集部:「戰火のかなた」のロッセリーニがバーグマンと結婚したという話がありましたが、あの結婚について何か感想をきかせて下さい。
:そうですねえ。女優としてのバーグマンにどうということは勿論ないことですし、フィリッピンでバーグマンの映画をボイコットするということが出たらしいですが、そういうことには何とも思いませんですがねえ。最善の努力をしてどうしても別れなければならなかったというなら仕様がないのじゃないでしょうか。一方的ないい方ですが、両方がそういう氣持でなく、あの場合はバーグマンの方がそういう氣持だったらしいですが…。
編集部:バーグマンは前に「パイザン」をみてロッセリーニの仕事だったら是非やらせてもらいたいということを洩らしたということがありましたね。そういうことと結婚とつながりはありませんでしょうか。
:さあ……、その恋愛的な感情がおきる前に既に監督として敬服しちゃっているのですから余計なりやすいことはなりやすいんでしょうね。きっと……。そうしてお写真などで拝見すると前のご主人と今度のロッセリーニ監督とは肉体的にも大分違うタイプですし、逆なあれがあるんじゃないかと思うんですよ、ね。あれが同質の男の方だとどうかわかりませんけれども、何か違うタイプの男性でしょう。
編集部:私達は雑誌でも取り扱った関係で鑑賞したのですが、あの中でスターというものが徹底的に使われている。ほとんど画面の中に押し殺されちゃっている。スターとしての独自の演技が画面を引きずるということはない。画面自身がいつもスターを押し殺していながら、一人々々のスターの存在価値ははっきり出ています。あの映画をみていてそういうところが非常にはっきり感じたのですが……。
:それは物にもよりましょうけれども、たしかにそういう作品はあります。私はそういう方が好きですのよ。その中に自分を活かしてくれる立派な写眞だったらいいと思います。昔大船でよくやっていたような小市民的な材料ばかりを扱ったものだったらいくらそういう描き方をしようと思ってもムリなのでこれからは、企画ですよ。四疊半や六疊というちっちゃなアパートとか、ちっちゃなおうちの中でやっていてはとてもそういうことはできませんからね。

自惚れはあっても自信がないこと

編集部:そういう観点からみたら原さんが今までおやりになった映画の中でどういうものがいいですか。「青い山脈」なんかどういう氣持でやられたのですか。非常にのびのびとしていましたが。
:それは責任を重く感じなかったですね。原作からしても、それほどまあ突っこんでない。
編集部:一般の世評は非常にいいようにきいていますが。
:だからつまりあれでしょう。明るくてみんなが樂しめるいい娯楽映画の高級な……。まあ、そういうものじゃないですか。私は本当に不幸にして甘やかされて育ってきましたからね。余りきびしい指導をされたことはないのですよ。
編集部:けれども「わが青春に悔なし」なんか……。
:ええ、まあ本当にあの位かもしれませんね。あれはちょっと私には軽い氣持でやれない役でしたからね。やっぱり画面にたくさん出るとちょっと責任を感じる……。少くても一生懸命にやるのが当たり前なんでしょうけれどもね、何となく……。
編集部:御自身もいいと思い、外もいいというふうに評判になった映画で、一体何がよかったとお考えになりますか。
:よかったといわれればねえ。みんなうぬぼれがあるようで、自信がないですしねえ。それはなかなかね。わからないですけれどもね。

原一族は藝術家揃いであること

編集部:原さん位いろいろ経驗されてきたらある程度それが客観的に評價されてきたと思いますけれども……。
:そういうものは、個人演技者にはわからないですね。
編集部:御自分でわからないですか。
:ええ、わかりませんね。
編集部:それをある程度信頼できるのは何ですか。
:それは自分の信頼できる人に――批評家の中にもそういういい人もいますでしょうけれども――やっぱり自分の一番信頼できる人に聞いてみることです。
編集部:それはどういう方ですか。
:私の場合は家族です。みんな一應映画の経驗者ばかりです。姉が昔脚本書いておりました。それから熊谷という義兄が監督ですし、私の実兄がキャメラマンをしております。そういう三人にきき、三人の意見が一番一致したのが「お嬢さん乾杯」でしたけれどもね。
編集部:それはどういうふうに一致されたのですか。
:まあまあ私の写眞の中では、私の仕事っぷりの中では――その写眞がどういう作品かということじゃないですよ――私の仕事の中ではまあマシな方でしょうといわれたのです。
編集部:そのほかに「晩春」なんかは……。
:「晩春」はクソミソです。ケチョンケチョンです。
編集部:どうしてですか。
:セーヴされないで、自分でやりすぎちゃったところがあるのかもしれません。小津さんとおっしゃる方は大分押さえられる方ですけれども、私がはじめてだったからです。あれで私は何か御褒美頂いちゃったのですけれどもね。それなんですけれどもね、うちのものにいわせますと、余り感心しないというような……。
編集部:そうすると女優の生活と家族生活というのは原さんの場合は矛盾されない方が多いのですか。
:矛盾ですか。そうねえ。私は、矛盾ってよくそういうことを結婚されている人がいうのでしょう。私は独身のせいか別に……。うちの兄弟はみんな仲がいいですからね。けんかはしませんし、それからまた率直に物をいいますから――それはもう兄弟だから当り前でしょうけれどもね。
編集部:藝術的な論争というようなのも……。
:やりますよ。そういうのがいつも食後の話題ですけれどもね。それから私の兄たちが話している政治的な動きですね。その時々の……。まあ大抵はやはり藝術的な話ですけれどもね。

原節子一人大地を行きつつあること

編集部:一般的にいいますと女優というものは日本の映画界が、つくり出すものなのでしょうか。それとも自分でつくってきたという人の場合がありますでしょうか。
:そうですねえ、今の段階でしたら最初の切り出しはまあ他力です、勿論。それは勿論そういうチャンスを與えてやって、考えた上にまたいざ製作というときにスタッフがみんな陰になって新人を可愛がっていくんです。そのお蔭でやっとできるんですからね。最初から俳優学校か何かにいて特別の演技力があってすぐそのままできるという人は滅多にないですからね。最初はやっぱりみんなで育ててやるんですよ。
編集部:原さんの場合は……。
:私の場合なんかは勿論そうですよ。昔ですから勿論そうですよ。まだ俳優学校というような基礎的なものも何もありませんし、ズブの素人の娘が入るんでしょう。ソヴィエトみたいに映画大学――があるのですか、しりませんけれども、何かそういうようになってくれば、そこを首席で卒業した卒業生がすぐ主演しても演技力があるというような場合は別ですけれども……。
編集部:原さんの場合は客観的にいって御自分で歩いていらっしゃることが多いんじゃないでしょうか。
:だんだん年を経てきますとやっぱり自分だって、考える力だってありますからね。

スター・ヴァリュウかヴァリュズバリか

編集部:太泉で高峰秀子さんに会ったときに高峰さんの話では、第一協圑の人への義理で「戰火をこえて」という映画に、バイ・プレイヤーとして出たというのですが……第一協圑の立場から云えば高峰さんが出なければ映画をつくれないというので、無理でもでてもらった。結局高峰さんのスター・ヴァリュウが色色な形で映画の製作に影響しているのですが、これについて御感想は?
:今はやっぱりまだそうですよ。時によるとスター・ヴァリュウを狙っているものもありますし、「きけわだつみ」のようなのもありますし、お客さんがどういうものに飛びつくか業者も見当がつかないということがあるのですね。スターを並べても当りはしないのです。いい監督で若い人を使って、写眞はよくても当らないこともあるのですよ。
編集部:どっちにいくと思いますか、これから、日本映画の傾向というのは、それからまたどっちにいくべきだと思われますか。
:いまは中途半端なところでしょうけれどもね。いいものは映画観客も歓迎をしてくれるような時代になるのではないでしょうか。
編集部:スターだけでは駄目だという……。
:ええ、そうなりますよ、勿論……。つまり今は中途半端な時ですからそういうスター・ヴァリュウでもつ写眞でなければ観客側もこないし、喜んでいきたがらないというところがあるでしょうが、だんだんそうでなくなりますよ、そうでなくちゃちょっと情けないんじゃないですか。

わがたしなみを語る

編集部:お酒をたしなまれるそうですが、日本酒ですか……。
:ビールです。
編集部:飲んだ後の氣分は?
:そうですね、ちょっと私このところ健康を害してそのせいか何か神経質になって夜睡眠がとれないようになったので、睡眠がよくできるようにと思って……。
編集部:お一人でお飲みになるのですね。
:ええ、ですからお薬みたいなものです。(笑声)
編集部:さわいで飲むよりもそういう方がいいのですか。
:いいえ、人がいた方がいいのです。ですから誰かいるとすぐ連れて帰って一緒に飲んだり……。
編集部:そうすると五、六本になりますか。
:そうですねえ、相手にもよりますけれども……。(笑声)
編集部:これは誰でも聞いていることで、ちょっと失礼だと思いますが、原さんの結婚感は?
:それはいい方がいれば結婚したいと思うのですが……。大体十六、七の頃から私は女は結婚することによって幸福になるのよなどといって説いてまわっていたのです。(笑声)だから自分がそういう考えですから……。
編集部:やっぱり映画畑の方がいいと思いますか……。
:いいえ、そういうことは全然ございません。ただやはりこういうふうに仕事に追われていますから、なかなか外の方とおつきあいするひまがないんです。
編集部:じゃ今までの映画畑では相手がいなかったわけですね。
:そうですねえ。いままで結婚していないところをみるとそうらしいですね(笑声)


ほほ…と笑うあの可憐な声が聞こえてきそう。

バーグマンのゴシップについて原さんに聞いてどうするんだと思うけど、原さんも何となく「私にそんなこと聞かれても…」みたいな雰囲気ながら真面目に答えていて、芸能誌のインタなんて今も昔もそう変わらないんだなあと思った。原さん、このバーグマンのことについても作品の役柄やストーリーによっての心構えについても、清潔で落ち着いているけど姉御肌(お酒も煙草も大好き)な一面もあるイメージそのままにおしとやかにでも率直に語っていて、ああー原さんだ…としみじみ心がときめいた。
しかし原さんのご家族(会田家、熊谷家)の間では、お嬢さん乾杯はいいけど晩春の演技はイマイチなんて!晩春の原さん大好きなのにwww
このインタに出てくる原さんの「カメラマンの実兄」が、当時撮影中だった『野性』にも参加している会田吉男さんで、3年後の『東京物語』撮影の直前に、別の映画の撮影中の事故で原さんの目の前で命を落としてしまう方だよね。どんな方だったんだろう。原さんとは兄妹で似ていたのかな…。このインタによると脚本も書いていたというお姉さんも、女優をしていたこともあるらしいしやっぱり綺麗な人だったんだろうか。

原節子 1950 野性

『野性』の原さん、当時29~30歳。山の中で育ったおしゃれも何も知らない美女という役らしいんだけど、原さんのイメージから想像つかないのですごく見てみたい。でももう残ってないらしい。残念。

原さんの戦前の出演作品は何本か見たけど、このインタで原さんが語っている「新人を可愛がってみんなで育てる」というのがまさにあの頃の原さんがいた時代なんだな。監督含め若いスタッフが多く、次々にスターが生まれ新しい作品が生まれ、観客も増えていく一方だった映画の黄金時代の入り口。
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コメント
こんばんは。
バーグマンとロッセリーニ。そんな話あったなあ!
10代だった私はレンタルで名作映画を借りまくってましたが、見れない作品もたくさんありました。アカデミー賞の授賞式で往年の名画のシーンをたくさん繋げた映像を流したことがあったんです。素晴らしい出来で録画を何回も見返してしまいました。その中で見てみたいって思ったものもあったんですが、結局タイトルもわからず。

原節子さんは伝説の、幻の美人女優ってイメージですが、インタビュー記事読むととても芯の強そうな方ですね。お酒とタバコをたしなんでいたとは意外です。鎌倉に住んでたんでしたっけ。昔の女優さんて洋画も邦画も幻想的な美しさがありますね。

何年か前に深夜の番組で日本の古典映画のワンシーンが紹介されていてあまりに映像がモダンというか、スタイリッシュでびっくりしたんですが、見たくても監督が誰だったか…。出演者も知らない。相変わらず私は作品探すの下手だなあ。

フィギュアが一段落したので、つゆこさんのブログ読むとまた映画見ようかなと思いますね。
Re: タイトルなし
ぽとすさま


こんばんは♥
たくさんの名画を繋げた素晴らしい映像と聞いて、フジのシーズン総括MADが思い起こされましたw
いいですねえ…きっとめくるめく素敵な映像だったんでしょうね。

バーグマンについては私も昔、映画雑誌か何かで過去の有名なスキャンダルとして読んだことがある記憶がうっすらあるぐらいなので、このインタでいきなり原さんに意見を求めているのが(もちろん当時はほぼリアルタイムの話題だったわけですが)なんか唐突で面白かったです。
この話にしても出演作品の話にしてもそうですけれど、原さんは自分の意見を言いつつも感情的になるわけではなく、バランス良く言葉をまとめる方だなと思いました。
煙草とお酒については、岡田茉莉子さんが若い頃原さんに「お酒と煙草はよした方がいいわよ」と、ご自分はお好きなのに言われたという有名なエピソードがあったり、また麻雀もお好きだったみたいで、小津映画の原さんの印象とは全然違いますよね。あと池部良さんがふざけた拍子に口が滑って、先輩の原さんに「節ちゃん」と呼んだらお尻で突き飛ばされたというエピソードも読んだ記憶があります(●⁰౪⁰●)
引退されてから半世紀が過ぎましたけど、今も日本のどこかにいらっしゃるのかと思うとドキドキします。鎌倉に今も住まわれていらっしゃるのか確かなことはわかりませんけれど、時々今もお元気らしいという噂も聞きますね。鎌倉には小津監督や木下監督のお墓もありますし、数年前に訪れた時には原さんもいつかここに参られたのかな…と静かに感動してました。

ぽとすさまの記憶に残ってる日本映画、なんでしょう…!気になる(≧∇≦)私はまだ全然知識もないのでヒントがあってもお答えできないかもしれませんが、いつかふとした拍子にでも再会されますように祈ってます(❁´ω`❁)もしわかったら、教えてくださいね♥

長々と失礼しました!止まらなくなっちゃいましたw

つゆこ
木下恵介監督と小津安二郎監督作品
演技の評価でベストなのが、木下恵介監督のラブ・コメデイの(お嬢さんに乾杯)でケチョンケチョンだったのが小津安二郎監督の(晩春)だったというのが興味深い…。インタビューを読むと女優として映画に対する理想のポリシーをもって臨んでいるしっかり者・原節子の姿があって。ロッセリーニ監督と女優イングリッド・バーグマンの話題にも、一般的な関心を持っている事が判る。映画人一家として自分の演技を気にしていて家族に評価を求めていた辺りも面白い!最近、シネマベーラ渋谷で千葉泰樹監督特集の中で喜劇の(東京の恋人)なども見たがコメデエンスとしての原節子の笑顔がとてもチャーミングでしたね♪今の評価では黒澤明作品や小津安二郎作品の原節子の評価が高くシリアスな面も高く注目されていますがー。

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